世界経済の基盤である自由貿易が、今まさに大きな揺らぎを迎えています。米中両国の覇権争いは激化の一途をたどり、収束の兆しは見えません。この緊迫した状況下で、私たちはどう立ち向かうべきなのでしょうか。金融政策の世界的権威であり、知日派としても名高い米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長が、今後の世界情勢を鋭く分析します。SNS上でも「関税合戦の先にあるリスクが本質的だ」「日本の外交手腕が試されている」と、今後の展開に高い関心が集まっています。
ポーゼン氏は、多くの人が懸念する「関税による直接的な金額被害」よりも、さらに深刻な実害を指摘します。それは、世界規模での「投資の抑制」と「国境を越えた研究開発協力の停滞」です。不確実な情勢が企業の投資意欲を冷え込ませ、技術革新を阻むことこそが真の恐怖と言えるでしょう。かつての第2次世界大戦前に見られた、特定の国々だけで経済を囲い込む「ブロック経済」に似た兆候はあるものの、当時のような戦争の引き金となる決定的なエネルギー資源の奪い合いには至っていないのが救いです。
揺らぐ国際秩序と問われる米中の責任
現在の米国トランプ政権は、自国が主導して作った国際ルールさえも軽視する姿勢を崩していません。この身勝手な行動は、中国に対して「ルールを破る免罪符」を与えることと同義であり、国際社会の最大の足枷となっています。世界貿易機関(WTO)などの国際機関が結束を欠けば、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に伴う不透明な融資リスクを監視することも難しくなるでしょう。自由で公正な市場を守るためには、国際社会が一致団結して大国を監視する目を光らせる必要があります。
また、米国のさびついた工業地帯「ラストベルト」の労働者層が保護主義を支持する動きに対し、ポーゼン氏は厳しい見解を示しています。産業の盛衰に合わせて人々が職を変えるのは自然なことであり、特定の既得権益を守ることは社会的な公平性を欠くという意見です。厳しい自己責任を伴う市場経済において、目先の利益だけで政策を選ぶ有権者もまた、その選択がもたらす未来の代償から逃れることはできません。耳当たりの良い言葉に惑わされない大局的な視点が、今こそ民衆に求められています。
日本の外交が握る鍵と計画経済の限界
混迷を極める世界において、日本の存在感は急激に高まっています。日本が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)の推進や、アジア開発銀行(ADB)を通じた中国への国際ルール順守の働きかけは、まさにその好例です。米国に対して国際機関との協調を直接促せる稀有な立場にある日本は、世界のバランスを保つ「仲介役」としてのリーダーシップを果たすべきでしょう。受動的な外交から脱却し、ルール形成の主導権を握る日本の姿に、国内外からの期待が寄せられています。
一方で、最先端の人工知能(AI)やビッグデータを駆使した「完全な計画経済」の可能性について、ポーゼン氏は明確に否定します。過去の歴史が証明している通り、どれほどコンピューターの性能が向上しても、複雑に絡み合う人間の経済活動を完全に予測し、管理することは不可能です。国家に権力を集中させず、最適な資源配分を可能にする資本主義こそが、人間の尊厳を守る民主主義と最も相性が良いシステムであることは、今後も揺るぎない事実であり続けるでしょう。
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