自動車業界に激震が走っています。日本が世界に誇るトヨタ自動車が、中国のEVスタートアップ企業「奇点汽車(シンギュラリティ・アイエム)」と異例の提携を発表しました。2019年11月06日現在、このニュースはSNSでも「トヨタが本気で変わり始めた」「ハードからソフトへの転換点だ」と大きな話題を呼んでいます。
奇点汽車のCEO、沈海寅氏は、かつて日本でキングソフトなどのIT企業を創業したシリアルアントレプレナー(連続起業家)です。彼が描く未来のクルマは、単なる移動手段ではありません。それは、私たちが毎日手にしているスマートフォンのように、購入後もソフトウェアの更新によって進化し続ける「スマートEV」なのです。
「乗り味」よりも「体験」を!スマートEVが変える常識
沈CEOは、現代のユーザーが求めているのは従来の「乗り味」ではないと断言します。これまで自動車メーカーが心血を注いできたパワートレーン(エンジンやモーターなどの駆動装置)や足回りの微調整にリソースを割くのではなく、IT技術を駆使した「スマートさ」の開発に集中する戦略を掲げています。
ここで言う「スマート」とは、ハードとソフトが分離されている状態を指します。従来のクルマは、購入時の機能がすべてである「フィーチャーカー」でした。対してスマートEVは、アルゴリズム(計算手順)を更新するだけで、顔認証や新しい自動運転機能、さらには雨量センサーと連動して窓を自動で閉める機能など、無限の体験を追加できるのです。
トヨタとの戦略的提携が生み出す圧倒的なスピード感
今回の提携により、奇点汽車はトヨタの小型EV「eQ」の設計ライセンスを取得しました。2021年に発売予定の新モデル「iC3」では、トヨタの信頼あるボディーやサプライヤー(部品供給業者)網を活用しつつ、中枢となるE/Eアーキテクチャー(車両の電子制御システム全体を司る構造)は自社で独自開発する方針です。
特筆すべきは、トヨタの豊田章男社長が自らこのプロジェクトを推進したという点でしょう。2017年末ごろから始まった議論は、わずか1年半という異例の速さで形になりました。巨大組織であるトヨタが、スタートアップのスピード感に合わせ、自らを変革しようとする強い意志が感じられるエピソードと言えるでしょう。
「売って終わり」ではない!高収益なサービス事業への転換
奇点汽車の真の狙いは、車両の販売台数を競うことではありません。彼らが重視するのは、アプリのように機能を追加購入してもらう「サービス事業」です。車両販売の利益率が数パーセントに留まるのに対し、ソフトウェアを通じたサービスは数十パーセントという高い利益率が見込めるからに他なりません。
私は、この戦略こそがこれからの自動車メーカーが生き残る唯一の道だと確信しています。もはやクルマは「所有する機械」から「体験をアップデートするプラットフォーム」へと進化しました。トヨタが奇点汽車から「3〜5年はリードしている」と評されたITの知見を吸収し、両者がどのような化学反応を起こすのか、世界中が熱い視線を送っています。
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