今、日本の個人投資家の間で「外貨預金」への関心がかつてないほど高まっています。2019年12月19日時点の状況を紐解くと、個人の外貨預金残高はついに7兆円の大台を突破しました。これは統計開始以来の過去最高水準を更新し続けるという、驚くべき勢いを見せています。
SNS上でも「国内の超低金利に預けておくより、少しでも利回りの良いドルに動かしたい」といった声が目立ち始めています。興味深いのは、円相場がやや円高に振れた時期があったにもかかわらず、残高が増え続けている点です。これは、一時的なブームではなく、長期的な資産形成の手段として定着しつつあることを示唆しています。
このトレンドの最大の要因は、現在の為替相場が極めて「動かない」ことにあります。専門用語では「ヒストリカル・ボラティリティ」と呼ばれる指標がありますが、これは過去の一定期間における価格の変動率を表すものです。現在、この数値は約5年ぶりの低水準である4%強にとどまっており、相場は極めて安定した状態にあります。
「円高リスク」よりも「金利の魅力」が勝る時代へ
相場が落ち着いていることで、投資家は「円高で資産が目減りする怖さ」よりも「着実な金利収入」を重視するようになっています。例えば、住信SBIネット銀行の米ドル定期預金では、2019年現在のキャンペーン等で年利1.8%もの金利が提示されるなど、国内預金とは比較にならない好条件が並んでいます。
個人の円をドルに替える動きは、為替市場の視点で見れば「円売り・ドル買い」の圧力となります。現在、個人の現預金約990兆円のうち、外貨預金が占める割合はわずか0.7%程度に過ぎません。しかし、この巨大な資産のわずか1%が動くだけでも10兆円規模の円売りが発生し、為替相場を数円単位で円安に振れさせるパワーを秘めています。
銀行側にとっても、海外融資や外債投資の資金源として外貨を集めたいという思惑があります。2019年以降も、金融機関による高金利キャンペーンは積極的に展開される見通しです。こうした供給側と需要側のニーズが合致している現状、外貨預金は円安をじわじわと支える「新勢力」として無視できない存在になるでしょう。
もちろん、2019年01月03日に発生した、わずか1分で4円も急騰した「フラッシュ・クラッシュ(瞬間的な価格暴落)」のようなリスクがゼロではありません。2020年には米大統領選などの重要イベントも控えていますが、長く続く「動かない円」という状況が、日本人の資産運用の常識を静かに、しかし確実に変えようとしていることは確かです。
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