クリント・イーストウッド最新作『リチャード・ジュエル』が描く冤罪の恐怖!ネット配信時代に巨匠が映画館へこだわる理由とは?

ハリウッドの生ける伝説として君臨するクリント・イーストウッド監督が、2020年5月に90歳という大きな節目を迎えます。これほどの高齢でありながら、映画制作に対する凄まじい情熱は一向に衰える気配がありません。そんな巨匠の待望の監督最新作『リチャード・ジュエル』が、2020年1月17日よりいよいよ日本で公開されます。今作は1996年に発生したアトランタ爆破テロ事件の真実を追った、息をのむ人間ドラマに仕上がっています。

物語の主人公は、爆発物をいち早く発見して多くの命を救った警備員のリチャード・ジュエルです。彼は一躍ヒーローとして称賛されますが、ある報道をきっかけに状況は一転し、世間からテロの容疑者として疑われる絶望のどん底へ突き落とされます。イーストウッド監督はこの作品について、彼自身の悲劇にとどまらず、アメリカという国家全体の悲劇でもあると深く警鐘を鳴らしているのです。

SNS上でもこのテーマは大きな反響を呼んでおり、「現代のネット私刑やSNSの炎上問題に通じる恐怖だ」「明日は我が身かもしれない」といった、強い危機感を抱く声が続々と上がっています。監督は、本来であれば裁判で有罪が確定するまでは誰もが「推定無罪」として扱われるべきだと力説します。推定無罪とは、刑事裁判で有罪と証明されるまでは犯罪者として扱ってはならないという、人権を守るための世界的な大原則のことです。

しかし、過熱する警察の捜査やメディアのスクープ合戦によって、この原則は容易に崩壊してしまいます。これこそがいつでも起こり得る悲劇であり、現代社会を生きる私たちへの強いメッセージだと私は感じます。なお、劇中で女性記者が色仕掛けによって捜査員から情報を引き出すという描写を巡っては、アメリカ国内のSNSやメディアで「偏見を助長している」との批判も噴出し、現在も激しい議論が交わされています。

1990年代後半から毎年 のようにハイクオリティな作品を世に送り出してきた巨匠ですが、気になる次回作については、現時点では未定だそうです。それでも「面白い素材を探して資料を読み漁っている」と語る姿からは、創作への執念が伝わってきます。また、近年はNetflixなどの動画配信プラットフォームが急速に台頭し、映画界は大きな変革期を迎えています。定額で映画が見放題になるサブスクリプションサービスの普及は、人々の視聴スタイルを劇的に変えました。

しかし、巨匠は「もし自分の映画を配信だけで流すと言われたらがっかりする」と、映画館での上映に対する強いこだわりを表明しています。映画は劇場の大きなスクリーンと音響で観るために撮影されているという信念は、まさに本物の映画人と言えるでしょう。名作『素晴らしき哉、人生!』を振り返り、技術が制限されていた時代だからこその工夫を絶賛する監督の言葉には、利便性ばかりを追求する現代の映像表現に対する、愛のある苦言が込められているように思えてなりません。

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