ファッション界に不滅の足跡を刻んだ偉大なデザイナー、エマニュエル・ウンガロさんが、2019年12月21日に86歳でこの世を去りました。南仏のイタリア移民の家庭に生を受けた彼は、仕立屋だった父親から服作りの基礎を徹底的に叩き込まれます。その後、パリの伝説的巨匠であるバレンシアガのもとでさらなる研鑽を積みました。1965年に自身のブランドを立ち上げると、その卓越した感性で瞬く間に頭角を現します。
当時のモード界は、高級注文服を意味する「オートクチュール」から、量産可能な高級既製服の「プレタポルテ」へと移り変わる激動の時代でした。彼は伝統的なロングドレスの概念を打ち破り、大胆なミニドレスにロングブーツを合わせるという革新的なスタイルを提案します。この斬新な挑戦は、サンローランらと共に時代の流行を塗り替えました。SNS上でも「彼のドレスは今見ても新鮮で美しい」と、その先進性を称える声が数多く寄せられています。
「色彩の魔術師」と称された彼の最大の魅力は、官能的な色使いと美しいドレープにあります。ドレープとは、布地を優雅にたるませて自然なひだを作る高度な立体裁断の技術です。ウンガロさんは「人間は服を単に羽織るのではなく、服の中で生きてゆくのだ」という熱い信念を抱いていました。単なる衣服ではなく、着る人の人生に寄り添うような実用性と美を追求し続けた姿勢は、現代のファッション業界でも高く評価されるべきでしょう。
しかし、1980年代以降は巨大資本の波がブランド業界を席巻し、経営面で苦難の連続を迎えます。1996年にはイタリアのフェラガモ傘下に入り、2005年にはアメリカの投資家に買収されるなど、激しい時代の荒波に翻弄されました。2004年に惜しまれつつも第一線を退いた彼は、晩年に「女性がオートクチュールを心から楽しめる時代はもう戻ってこない」と、職人技が廃れていく時代の変化を深く嘆いていたと伝えられています。
効率性やビジネスばかりが最優先される現代において、彼が愛した純粋な美への情熱は、私たちの心に強く響きます。ファストファッションが溢れる今だからこそ、一着の服に命を吹き込むようなウンガロさんの職人魂を見つめ直したいものです。彼が遺した鮮やかなデザインと情熱の物語は、これからも色褪せることなく、世界中のファッションを愛する人々の心の中で永遠に生き続けるに違いありません。
コメント