私たちの日常に、驚くべきスピードで溶け込んでいる存在があります。それが、インターネット上で自分の分身となるキャラクター「アバター」です。かつては一部のゲーム愛好家だけのものという印象もありましたが、現在の熱狂ぶりは目を見張るものがあります。コンピューターグラフィックス(CG)で作られたキャラクターの姿で動画配信を行う「バーチャルユーチューバー(VTuber)」の数は、すでに国内だけで9000人に達していると言われています。
SNS上でもこの現象は大きな話題となっており、「現実の姿を気にせず自分を表現できるのが最高」「新しいコミュニケーションの形として定着している」といったポジティブな声が数多く寄せられています。さらに、2019年には仮想現実(VR)の空間内で開催された展示即売会「バーチャルマーケット」に、なんと70万人を超える人々がアバター姿で来場しました。このように、最先端のテクノロジーを駆使したお祭りが大盛況を見せているのです。
スマートフォンを使ってより手軽に楽しむ層の広がりは、さらに凄まじい規模に達しています。自分にそっくりな3Dのキャラクターを簡単に作れるアプリ「ZEPETO」は、世界中で1億2000万人もの人々に愛用される巨大プラットフォームとなりました。日本国内でも2019年に入ってから10代の女性を中心に爆発的なブームを巻き起こし、その利用者は1500万人に達しています。スマートフォンの画面が、個性を表現する最大の舞台になっているのでしょう。
また、ゲームの実況動画を配信できるアプリ「ミラティブ」では、2018年秋から「エモモ」という独自のサービスが展開されています。これは自身の動きに合わせてキャラクターが連動する画期的な仕組みで、すでに100万人以上の配信者が日常的に活用しています。運営会社のトップを務める赤川隼一社長は、仲間と共に生き残りをかけて戦う「バトルロイヤルゲーム」の流行が、若者たちにアバターを当たり前の存在として受け入れさせた背景にあると分析します。
さらに同アプリは2019年5月から、キャラクターの姿で歌を届ける「エモカラ」というカラオケ配信サービスも開始しました。ほぼ毎日のように利用している27歳の女性は、どこにいてもカラオケボックスにいるような感覚を味わえると、その魅力を熱っぽく語ります。周囲を気にせず歌える環境がないときは、他の人の歌を聴く側に回るなどして楽しんでいるそうです。このように、状況に応じて柔軟に遊び方を変えられる点も人気の秘密と言えます。
キャラクターの姿を借りて活動することは、本名や素顔といった個人の特定につながる情報を隠せるという安心感をもたらします。そのため、純粋に歌の魅力や趣味を通じて、新しい友人と深い絆を結ぶ人が増えているのは非常に興味深い現象です。一方で、彼女たちは現実世界のカラオケボックスにも友人たちと足を運んでおり、デジタルの仮想空間とリアルな現実世界を、実に器用に、そして自然に使い分けている様子が窺えます。
私は、このアバター文化の隆盛こそが、これからの人間関係のハードルを下げる重要な鍵になると確信しています。外見や年齢、性別といった現実の縛りから解放されることで、人はより自分らしく、内面的なつながりを深めることができるはずです。インターネットも現実も区別しない若い世代の感覚は、これからの社会におけるコミュニケーションのスタンダードを再定義していくに違いありません。今後のさらなる進化から目が離せない分野です。
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