デジタル技術が急速に発展し、スマートフォン一つで何でも楽しめる現代において、あえてリアルな体験を求める人々が急増しています。チケット販売大手のぴあ株式会社を率いる矢内広社長は、インターネットの普及に伴い、本物の熱量を感じられる場所への憧れや欲求がむしろ強まっていると指摘しました。世間では個人消費の低迷が囁かれていますが、ライブエンターテインメント市場は着実に成長を続けており、人々の「コト消費」への意欲は衰えるどころか、さらに加熱しているようです。
こうした市場の盛り上がりを受け、SNS上でも「配信も最高だけど、やっぱり現地の空気感に勝るものはない」「ライブに行くために仕事を頑張れる」といった共感の声が多数寄せられています。画面越しでは決して味わえない、会場全体が一体となる感動や興奮を求めて、多くのファンが劇場やスタジアムへと足を運んでいる様子がリアルに伝わってきます。時代がデジタルに傾くからこそ、五感で体験する生のエンターテインメントが、かつてないほど貴重な価値を持ち始めているのでしょう。
また、現在のエンタメ界では、従来の枠組みに捉われない革新的な文化が次々と誕生しています。その代表例が「2.5次元ミュージカル」や「VTuber(バーチャルユーチューバー)」です。2.5次元ミュージカルとは、2次元の漫画やアニメ、ゲームの世界を、人間のキャストによって3次元の舞台へと再現する最先端の演劇手法を指します。日本の若きクリエイターたちが持つ、新しいものを作り出す創造力は非常に旺盛であり、これらの新しいジャンルが市場をさらに牽引しています。
メガイベントがもたらす熱狂とインバウンドの可能性
2019年に日本中を沸かせたラグビーワールドカップをきっかけに、生の観戦やライブならではの面白さに気づく人が一気に増えました。2020年は東京五輪が開催されるため、会場の確保が難しくなるといった短期的な課題はあるものの、同年のライブエンタメ市場は前年を上回るプラス成長を記録する見込みです。単なる一過性のブームに終わることなく、興奮と感動の記憶は広く定着し、2021年以降もこの素晴らしい流れは持続していくと考えられます。
さらに、海外から日本を訪れる旅行者、いわゆる訪日外国人による「インバウンド需要」も大きな注目ポイントです。現時点での市場規模はまだ限定的ではあるものの、外国人向けのエンタメ消費はこの5年間で約5倍という驚異的な伸びを記録しています。日本の伝統文化を体感できる大相撲や、白熱した試合が展開されるJリーグなどは特に海外からの関心が高く、日本のスポーツや文化が国際的なコンテンツとして評価されている証拠と言えます。
2019年10月の消費税率引き上げによる影響が懸念されましたが、チケットの売れ行きに鈍化の兆しは見られません。生活必需品を切り詰める動きはあっても、心を満たしてくれるエンタメへの投資を惜しまないファンが多いのは頼もしい限りです。今後は、新人映画監督を称える「大島渚賞」の行方など、新しい才能の誕生にも注目が集まります。リアルな体験が持つ唯一無二の価値は、これからも私たちの日常を豊かに彩り続けてくれるに違いありません。
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