秋田県由利本荘市を拠点とする第三セクター、由利高原鉄道に新しい風が吹き込んでいます。2019年6月26日に開催された株主総会および取締役会において、公募されていた新社長が正式に決定しました。同日付で代表取締役に就任したのは、仙台市役所出身の萱場道夫氏(64歳)です。地方のローカル線を維持していくことは容易ではありませんが、萱場新社長は記者会見で「沿線の観光資源には大変大きなポテンシャル(潜在能力)があります」と語り、強い意欲を示しました。そして、目標として「補助金以上の価値を持った会社を目指したい」と力強く宣言されています。
萱場新社長が特に力を入れていくと表明されたのが、訪日外国人観光客、いわゆるインバウンド需要の掘り起こしです。具体的な戦略としては、沿線にある雄大な鳥海山でのトレッキングや、雪国ならではのスノーモービル体験といった、地域固有の魅力を生かした体験型観光を推進する考えを示されました。由利高原鉄道は、羽後本荘駅と矢島駅を結ぶ全長23キロメートルの「鳥海山ろく線」を運行しており、その名の通り、鳥海山の麓の豊かな自然と、昔ながらの日本の風景を楽しむことができる路線です。この地の利を最大限に活用し、魅力的な旅行コンテンツを生み出していくことでしょう。
経験豊富な経営手腕に期待!新社長の経歴と公募の背景
新社長に就任した萱場氏は、仙台市のご出身で、福島大学経済学部をご卒業されています。その後、仙台市役所に入庁し、経済局長や環境局長といった要職を歴任された経験をお持ちです。さらに、市が全額出資する、市営地下鉄やバスの保守・点検を担う仙台交通(仙台市)では、2015年からの3年間、社長を務めるなど、公共交通事業における経営経験も豊富です。今回の社長公募には27名もの応募があり、その中から7名との面接を経て、萱場氏が選ばれました。この豊富な経験と実績が、由利高原鉄道の再建への大きな期待につながっているのでしょう。
一方、前社長の春田啓郎氏(67歳)は、任期満了をもって退任を申し出られました。その理由として、2016年度に開始された貸し切りバス事業が、残念ながら黒字に転換する見込みが立たないことが挙げられています。この判断は、厳しい経営状況を鑑みた上での苦渋の決断だったと推察されます。実際、由利高原鉄道の2019年3月期の業績は、売上高が前の期比で6.4%増の8,800万円と、定期外の乗客収入は伸びたものの、バス事業が全体の足を引っ張る形となり、経常損益は1億31万円の赤字へと、前の期(9,962万円の赤字)からさらに膨らんでしまった状況なのです。この厳しい現実を、新社長がどのように変えていくのかに注目が集まります。
ローカル線の生き残り戦略とSNSでの反響
第三セクターが運営するローカル鉄道の経営は、全国的に見ても非常に厳しく、存続そのものが社会的な課題となっています。そんな中で、由利高原鉄道が公募により外部から経験豊富な経営者を探し、積極的なインバウンド戦略を打ち出したことは、ローカル線が生き残るための「攻めの経営」の好例となるでしょう。このニュースに対するSNSでの反響も大きく、「経験豊富な元市役所の方が社長になったのは心強い」「鳥海山は魅力ある観光地だから、海外の人にもっと知ってもらいたい」といった期待の声が多数見受けられます。また、「赤字のバス事業をどう立て直すか、手腕が問われる」といった、冷静な意見もあり、多くの人々がこの鉄道の動向を注視していることが分かります。
私自身の意見としては、萱場新社長が述べられた「補助金以上の価値」という言葉に、由利高原鉄道の未来を切り開くヒントが詰まっていると考えています。ローカル線は単なる移動手段ではなく、沿線の文化や風景を伝える重要な観光資源であり、地域コミュニティの拠り所でもあります。体験型観光を充実させ、訪れた人々に深い感動と特別な思い出を提供することで、運賃収入以上の経済効果と、何よりも地域への誇りを生み出すことができるのではないでしょうか。由利高原鉄道の、新たな挑戦と、その成功への道のりを楽しみに見守っていきたいと思います。
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