ネット社会の覇者は誰だ?ニーアル・ファーガソン『スクエア・アンド・タワー』が明かす歴史の支配構造とGAFAの真実

現代の地球には約77億人もの人々が暮らしており、私たちは日々、経済や社会のつながりの中で生きています。
そんな複雑な人間関係の正体を暴くアプローチとして、今まさに注目を集めているのが「社会ネットワーク分析」です。
これは社会のつながりを客観的な構造として捉え、分析する画期的な手法を指します。
SNS上でも「人間関係のモヤモヤがすっきり言語化されている」と、知的好奇心を刺激された読者からの熱い書き込みが相次いでいる注目のトレンドなのです。

この分析法では、個人や企業、国家といった個々の主体を「ノード(結節点)」と呼びます。
そして、それらの間に存在する結びつきや関係性を「エッジ(線)」という概念で抽象化して表現する仕組みです。
2020年2月15日、歴史学の巨頭であるニーアル・ファーガソン氏の話題作『スクエア・アンド・タワー』の書評が、東京大学教授の岡崎哲二氏によって解き明かされました。
本書はこの斬新な視点を取り入れ、人類の歩みをダイナミックに塗り替える挑戦的な一冊となっています。

タイトルにある「スクエア(広場)」は、上下関係のない水平で緩やかな分散型のネットワークを象徴しています。
その一方で「タワー(塔)」は、命令系統が明確な階層的組織を表しているのです。
著者は、人類の歴史はこの2つの勢力が激しく火花を散らし、対立を繰り返してきたプロセスであると見事に喝破しました。
過去数百年を振り返ると、広場のようなネットワークがタワーを圧倒し、社会の主役に躍り出た黄金期がこれまでに2度存在したと本書は強調しています。

最初の黄金期は、15世紀末から18世紀末にかけての激動の時代でした。
宗教改革や科学革命、啓蒙運動といった歴史の転換点は、まさにネットワークの力がもたらした革新だったと言えるでしょう。
そして2度目の黄金期こそが、冷戦体制という強固な階層組織が崩壊した、1970年代以降から続く私たちの現代なのです。
インターネットを通じて世界中の人々が瞬時につながる現代は、国家の枠組みを超えたイノベーションやテロ、経済危機を引き起こし、既存の権力を激しく揺さぶっています。

しかし、ここで私は一つの疑問を投げかけたいと思います。
現代のネットワーク社会は、本当に古い階層組織を打ち倒して自由な楽園を作ったのでしょうか。
SNSでは「結局、ネットの世界も一部の強者に支配されている気がする」という鋭い声が溢れています。
まさにその指摘通り、本書が描く対立関係の裏には、ネットワークと階層組織が手を取り合い、お互いの機能を高め合うという、奇妙で補完的なリアルが隠されていると考えられます。

その最たる証明が、現代を牛耳る「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業の存在ではないでしょうか。
誰もが自由に参加できるインターネットの広場から、皮肉にも歴史上もっとも強固で寡占的なタワー(巨大帝国)がそびえ立つ結果となりました。
自由なネットワークが拡大するほど、そのシステムを支配する階層組織がさらに肥大化していくというパラドックスが起きています。
本書は、単なる歴史の解説書にとどまらず、私たちが直面する未来の支配構造を見抜くための必読書です。

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