イギリスの欧州連合離脱、いわゆる「ブレグジット」の動向により、現在の英国には内向きで閉鎖的なイメージが漂っているかもしれません。かつての大英帝国の栄光を懐かしむ、後ろ向きなノスタルジーに浸っているのではないかと勘ぐりたくもなります。
しかし、そんな心配は全くの杞憂に終わるでしょう。ロンドンのセント・パンクラス地区に位置する大英図書館の玄関をくぐれば、その活気溢れる光景に誰もが圧倒されるはずです。ここは過去を静かに回顧するだけの、かび臭い場所などでは決してありません。
1997年に開館した大英図書館は、日本の静かな図書館のイメージを180度覆します。エントランスに広がる開放的な吹き抜けのホールは、人々の賑やかなおしゃべりと熱気で満ちており、まるで世界中の文化が交差する活気あるバザール(市場)のようです。
ロリー・キーティング館長が語るように、同館は世界中の人々が等しく「生きた知識」に触れられる開かれた場所を目指しています。知識を本棚に眠らせておくのではなく、人類共通の財産として誰もがアクセスできるようにするという姿勢には、深く共感させられます。
圧倒的な存在感を放つガラスの書架と歴史を物語る至宝たち
館内の中央で一際目を引くのが、ガラス張りの巨大な書庫「キングズ・ライブラリー・タワー」です。ここには15世紀から19世紀初頭にかけての貴重な書籍が約8万5000冊も収められており、ライトアップされた背表紙の列は神々しいまでの美しさを放っています。
さらに無料の展示スペース「トレジャーズ・ギャラリー」では、世界最大級である1億7000万点もの収蔵品から厳選された至宝を間近で見られます。4世紀のキリスト教聖書「シナイ写本」や、15世紀に作られたグーテンベルクの活版印刷聖書などが並びます。
活版印刷とは、文字を1文字ずつ金属のハンコ(活字)にして組み合わせ、インクを塗って紙に印刷する画期的な技術のことです。それまで手書きだった本が大量に作れるようになり、世界の歴史や知識の拡散スピードを爆発的に進化させた偉大な発明といえます。
SNS上でもこの場所は話題を集めており、「歴史の重みに鳥肌が立った」「チベット仏教の僧侶が砂曼荼羅を作っていて驚いた」といった声が上がっています。多様な文化が混ざり合うこの空間は、現代の英国が持つ真の多様性と包容力を体現しているのです。
歴史上の人物の直筆手紙など、生の資料から意外な素顔を垣間見られるのも醍醐味でしょう。単なる観光名所として消費するのではなく、人類の歩みそのものを肌で感じられる大英図書館は、私たちに学びの本当の楽しさを再確認させてくれる素晴らしい空間です。
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