2019年6月3日からのトランプ米大統領によるイギリス訪問は、出発前から異例の険悪なムードに包まれています。米英両国が長年築いてきた「特別な関係」をアピールするはずの訪問ですが、トランプ大統領の相次ぐ物議を醸す発言が、その結束に大きな波紋を広げているのです。この状況は、訪問の目的であるはずの友好ムードを大きく損ない、イギリス国内でも反発の声が高まる事態となっています。
特に注目を集めているのは、イギリス王室のヘンリー王子の妻であるメーガン妃に対する辛辣な発言です。メーガン妃が以前、トランプ氏を「分断をあおる」人物だと批判したことを受け、大衆紙『サン』のインタビューでトランプ氏は「彼女が不快な人物だと知らなかった」と応酬しました。この発言はSNS上でも瞬く間に拡散され、「王室を巻き込むな」といったトランプ氏への批判的な意見や、「大統領の発言としては配慮に欠ける」といった反響が飛び交っています。メーガン妃は、今回のトランプ氏と英王室との懇談には参加しない見通しで、この一連の騒動が王室と大統領の関係に影を落としているのは間違いありません。
さらにトランプ氏は、訪問直前にイギリスの内政にまで踏み込む姿勢を見せています。テリーザ・メイ英首相の後継者を決める与党・保守党の党首選について、強硬な欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」派を支持する意向を表明しました。具体的には、強硬離脱派として知られるボリス・ジョンソン前外相を名指しし、「彼はすばらしい成果を残した。とても有能だ」と手放しで賞賛しています。これに加えて、10月末の期限までにEUとの離脱協議がまとまらなければ、「合意なき離脱」、つまり協定を結ばずにEUから離脱する「ハード・ブレグジット」を決断すべきだとまで訴えました。これは他国の政局、内政干渉にあたる行動として、国際的にも波紋を呼ぶ可能性があり、我が国の編集部としても一連の言動には懸念を抱かざるを得ません。
環境問題でも対立の構図
また、トランプ氏とイギリス王室との間には、環境問題でも意見の相違が浮き彫りになっています。トランプ氏はロンドン滞在中にチャールズ皇太子と面会する予定ですが、トランプ氏はこれに先立ち、「米国の環境は世界で最もきれいだ」と主張し、温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」から離脱を表明した自国の姿勢を正当化しています。
熱心な環境活動家として知られるチャールズ皇太子は、パリ協定離脱を決めたトランプ氏に批判的な立場であると見られており、トランプ氏自身も「(企業負担の増加を通じて)環境対策を講じた国が罰せられる。それは不公平だ」と、皇太子に反論する構えを見せています。環境政策を巡る両者の会談は、米英の特別な関係をアピールする場というよりも、むしろ異なる価値観がぶつかり合う緊迫した場となるでしょう。
一方、イギリス国内ではトランプ大統領に対する強い反発が巻き起こっています。特にロンドンのカーン市長は、英紙への寄稿でトランプ氏を「世界に広がる脅威の中でも最も悪い事例の一つだ」と痛烈に批判しました。カーン市長は、イギリス史上初のイスラム系のロンドン市長であり、トランプ氏の反移民政策に対してこれまでも強く非難してきました。こうした背景から、ロンドン市内ではトランプ氏に対する大規模な抗議デモも計画されており、訪問期間中の警備や混乱が懸念されています。トランプ氏の一連の「暴言」は、米英の外交関係だけでなく、国際社会における指導者としての品位についても再考を迫るものだと言えるでしょう。
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