2019年5月31日、東京商品取引所(TOCOM)の天然ゴム先物市場において、価格が一時的に急上昇し、約2カ月半ぶりの高値を記録しました。市場の指標となる限月(期先)のRSS(リブド・スモークド・シート、天然ゴムの国際的な主要取引銘柄です)は、午前の取引で一時1キログラムあたり195.7円という水準に到達し、3月中旬以来の最高値圏に躍り出たのです。天然ゴムの価格変動は、自動車産業をはじめとする多くの製造業に影響を与えるため、この急騰は大きな注目を集めています。
この価格を押し上げた最大の要因は、「供給減少への懸念」でしょう。天然ゴムの主要な生産地である東南アジアでは、昨年末から続く異常気象が生産量に深刻な影響を与えていることが判明しています。特に、エルニーニョ現象(太平洋東部の海水温が平年より高くなる現象で、世界各地に異常気象をもたらします)に伴う高温や少雨が、ゴムの木の樹液採取を困難にしているのです。これにより、生産活動の縮小が避けられない状況となっています。
天然ゴム生産国連合(ANRPC)のデータからも、供給不安の深刻さが裏付けられています。2019年1月から3月までの世界の天然ゴム生産量は、前年同期と比較して約5%も減少しました。この具体的な数字が、市場参加者の間で「今後、供給がタイトになるのではないか」という思惑を強め、買い注文を加速させる引き金となりました。供給が需要に追いつかなくなるという見通しは、相場にとって最も強い上昇圧力の一つになるものです。
実際に、主要生産国の一つであるタイの現物市場では、RSSの価格が5月30日に既に年初来高値を更新しています。現物価格の上昇は、間もなく期近(きぢか)の先物価格にも波及する可能性が高いため、東京市場の先物トレーダーたちはこの動きに敏感に反応しました。SNS上でも、「ゴム製品の製造コストが上がりそう」「自動車やタイヤメーカーは大変だ」といった、今後の影響を懸念する声が多く見受けられ、市場の関心の高さが伺えました。
私見として、この一連の価格上昇は、天然資源が気候変動という避けられないリスクに晒されている現状を強く示唆していると考えられます。しかし、午後の取引では、世界的な株価下落を受けたリスクオフの姿勢(投資家が、リスクの高い資産から安全な資産へ資金を移す動き)が優勢となり、一時的に利益確定の売りが市場を覆いました。その結果、5月31日の清算値は前日と横ばいの194.2円で取引を終えましたが、根底にある供給不安は解消されておらず、天然ゴム価格は今後も高値圏で推移する可能性が高いでしょう。
コメント