2019年6月3日に開催された「第25回アジアの未来」で、カンボジアのフン・セン首相は、激化する米中貿易戦争が世界経済、そしてアジア諸国にもたらす影響について、強い懸念を表明されました。首相は、米国が中国製品に追加関税を課すことで、最終的にその製品を購入する米国民こそが打撃を受けるという見解を示されています。さらに、米中両国の対立は、彼ら自身の経済活動を阻害するだけでなく、関係のない他国の企業活動までも巻き込み、多岐にわたる深刻な影響をもたらすのが、貿易戦争の避けられない帰結だと強く警鐘を鳴らしました。米国によるイランへの一方的な経済制裁も、これと同様の広範囲な悪影響を及ぼすと指摘されています。
このフン・セン首相の発言は、国際社会の大きな関心を集めるテーマであり、ソーシャルメディア上でも、「結局、関税のコストは消費者が負担することになる」といった、消費者目線での共感や、「G20などで、米中が建設的な解決策を見出すことを期待したい」といった、世界平和を願う声が多く見受けられます。首相が指摘されたように、貿易戦争は、その名の通り「戦争」であり、単なる経済摩擦では済まされない、広範なサプライチェーンの混乱と、投資の冷え込みを招くことでしょう。一刻も早い、米中両国による対立の適切な解消が望まれます。
米中という巨大な「象」が争う中で、カンボジアのような小国は、その下敷きとなって踏みにじられる「草」になることを避けるため、自ら生き残りの道を見つける必要性があると、フン・セン首相は力強く訴えておられます。カンボジア経済にとって米中貿易戦争の影響は非常に小さいとされながらも、全ての国との貿易関係を維持し、特定の超大国への過度な依存を避けることで、国際的な対立を乗り切るという、したたかな外交戦略を示唆されているのでしょう。国際政治の大きな流れに翻弄されず、国家の主権と国益を最優先する、小国なりの現実的な生き方だと言えるでしょう。
また、カンボジアが中国の巨大経済圏構想である「一帯一路(いっぽういちろ)」に参加することで、「債務のわな(さいむのわな)」にかかるのではという、西側諸国からの批判や懸念についても言及されています。「債務のわな」とは、融資を受けた国が、その多額の債務を返済できなくなり、結果として融資国に港湾やインフラなどの重要資産の支配権を明け渡すことになってしまう状況を指す、国際政治の専門用語です。しかし首相は、カンボジアの借入金は国内総生産(GDP)に比して非常に少なく、融資を受ける際には必ず国家の「主権」を維持しており、中国側もそれを尊重し、融資の使い道について指示はしないと断言されました。さらにカンボジアは、中国だけでなく、日本やインド、韓国が主導するイニシアチブにも積極的に関与している事実を挙げ、特定の国に偏らないバランス外交を展開していることを強調されています。
国家主権と独自路線を主張する「アジア型民主主義」
フン・セン首相は、欧米諸国がカンボジアの政権運営、特に「独裁化」を批判していることに対し、明確な反論を展開されました。民主主義のあり方とは、それぞれの国が持つ歴史、伝統、習慣によって異なるものであり、「ある国にとって良いことが、他の国にとって良いこととは限らない」というのが首相の持論です。国家が自国にとって最適だと考える道を選択したのならば、他国はそれを尊重すべきだという、内政不干渉の原則を強く主張されています。
各国の伝統や習慣、歴史的経緯に介入すべきではなく、ある国が下した決定が国民の生活水準の向上に貢献しているのであれば、他国が口出しをする必要はないというのです。この発言には、西欧的な価値観の押し付けに対する、アジア諸国の指導者としての強い反発が込められていると拝察いたします。カンボジアのような国々が、自国の文化や歴史に根ざした独自の政治体制、すなわち「アジア型民主主義」を模索し、発展させていく権利は当然あるでしょう。国際社会は、自国の利益や価値観を一方的に押し付けるのではなく、多様な国家のあり方を理解し、相互に尊重する姿勢が、これからの国際協調には不可欠だと言えるのではないでしょうか。
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