人口減少が進む地域において、「干天の慈雨」とも言える活況を呈しているのが、四国4空港への訪問客です。国内外からの来訪者が増え続けるなか、地元のバスやタクシー事業者は、この新たな需要に熱い視線を注いでいます。従来型の利用が減少しつつある状況で、空港発着のニーズはまさに救世主と言えるでしょう。各事業者は、利便性を高めるための工夫を凝らし、定額制の導入や観光名所への送迎サービスなど、使い勝手の向上に知恵を絞っています。さらに、観光の「回遊性」を高めることを目指し、鉄道など他の交通手段との連携も積極的に模索され始めています。空港を起点とした二次交通、すなわち空港から目的地へ向かうための交通手段の充実こそが、地域全体に活気をもたらす鍵となるに違いありません。
具体的な取り組みとして、2019年4月26日に開幕した「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)」に合わせて、高松空港を拠点とした新しいサービスがスタートしました。高松タクシー協会に加盟する25社が運行を開始したのは、「定額タクシー」です。インバウンドを含むすべての観光客が利用しやすいように設計されており、乗車料金があらかじめ決まっているため、安心して利用できるのが大きな特長です。この定額タクシーは、高松市の中心部を3つのエリアに区分し、前日までの予約を必須としています。中型車であれば3,800円から4,400円、小型車であれば3,600円から4,100円という料金設定で、通常のメーター運賃と比べて100円から500円ほど割安になっています。これは、お得感を全面に押し出した魅力的なサービスと言えます。
この定額タクシーの導入背景には、加盟各社の強い危機感があります。四国運輸局のデータによれば、2018年の香川県内におけるタクシーの輸送人員は、なんと全ての月で前年を下回るという厳しい状況に直面していました。この困難な事業環境を打開するべく、各社が着目したのが、成功事例として知られる羽田空港での定額タクシー運行でした。2018年4月の民営化以降、次々と施策を打ち出し成長を続ける高松空港に、タクシー業界は大きな期待を寄せている様子がうかがえます。地域経済の活性化には、このような既存事業者の「守り」ではなく「攻め」の姿勢が不可欠であり、この果敢な挑戦は高く評価されるべきでしょう。
🚌バス事業者の参入と地域観光の魅力向上
高松空港の旅客数増加は、バス事業者にも新たなビジネスチャンスをもたらしています。例えば、これまで学校の遠足などで貸し切りバスを主に提供してきた西讃観光(香川県観音寺市)は、少子化の影響による貸し切りバス事業の縮小を補うため、2019年7月から乗合バス事業に参入する予定です。この新しい路線は、同市や愛媛県四国中央市と高松空港を結び、毎日5往復の運行が計画されています。特に四国中央市は製紙業の集積地であるため、同社はビジネスでの出張需要を見込んでいます。また、このバスを利用して高速観音寺のバス停で下車すれば、「日本のウユニ塩湖」としてSNSなどで話題沸騰中の父母ケ浜(香川県三豊市)へのアクセスも容易になります。
さらに西讃観光はタクシー事業も展開しているため、バスとタクシーを連携させたシームレスなサービス提供が可能になります。これにより、観光客は乗り継ぎのストレスを感じることなく、人気の観光地である父母ケ浜まで快適に移動できるでしょう。これは、単に移動手段を提供するだけでなく、観光客の利便性を最優先に考えたホスピタリティあふれる取り組みであり、地域の観光振興に大きく貢献するはずです。このように、事業者間の垣根を越えた連携こそが、現代の旅行者に求められる質の高いサービスと言えるのではないでしょうか。
🚄二次交通の充実は「回遊性」を高め、地域に好循環を生む
旅客数の増加という追い風を背景に、バス・タクシー会社がサービスを拡大する動きは、空港からの二次交通の改善に直結します。二次交通の利便性が向上することで、空港利用者は四国内をより自由に移動しやすくなり、その「回遊性」が高まるでしょう。この回遊性の向上が、さらなる空港利用者の増加へとつながるという、地域を活性化させる望ましい好循環が生まれることが期待されます。高松空港の小菅光裕常務は「鉄道との連携も検討していきたい」と述べており、将来的な多角的な交通ネットワークの構築に意欲を見せています。
高知県においても、空港からの二次交通の充実化が図られています。特に室戸などの県東部へのアクセスを向上させるため、県は土佐くろしお鉄道の「ごめん・なはり線」と接続する新たな交通網を模索しており、バス会社との協議を進める方針です。地域全体で二次交通の利便性を向上させようという姿勢は、四国が持つ豊かな観光資源を最大限に活かすために極めて重要です。
🌐全国的な取り組みと四国が担う役割
全国的にインバウンド(訪日外国人観光客)が増加する傾向にある中で、空港バスの使い勝手を高めるための全国的な取り組みも展開されています。2019年2月には、全国12の空港アクセスバス運行会社が「空港アクセスバス・アライアンス」を設立しました。四国からは、伊予鉄バス(松山市)がこのアライアンスに参加しています。この組織の活動により、観光客は共通のポータルサイトから全国の空港バスの時刻表などを一括で探すことができるようになり、情報収集が格段に容易になりました。これは、旅行者にとってのストレスを軽減し、より快適な旅をサポートする重要な進化です。
伊予鉄グループの清水一郎社長は、松山市内の中心部が空港から近く、観光地がコンパクトにまとまっているという優位性を活かして、情報発信を強化していく考えを示しています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、2025年の万国博覧会(大阪・関西万博)といった国際的なイベントが控えるなか、新幹線が開通していない四国において、国内外からの「交流人口」を拡大させる上で空港が果たす役割は非常に大きいと言えます。官民一体となった取り組みが一層求められており、四国の空港と二次交通の進化は、日本の観光戦略における重要な柱の一つとなるでしょう。
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