2019年6月11日、イギリス政府は、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにするという、極めて野心的な目標を発表いたしました。これは、これまでの長期目標であった「1990年比で80%削減」から大きく踏み込んだものであり、気候変動への取り組みを国家の最重要政策として加速させる決意の表れだと言えるでしょう。この動きは、地球規模での気候変動対策を巡る議論に大きな一石を投じることになると思われます。
当時のテリーザ・メイ首相は、2019年6月12日に議会へこの法改正を提案し、より意欲的な新目標への置き換えを強く求めると表明しました。この法改正が実現すれば、イギリスは主要7カ国(G7)の中で初めて、温暖化ガスの実質ゼロ排出目標を法律で宣言する国となる見込みです。首相は声明の中で、「これは野心的な目標ではありますが、私たちの地球と将来世代を守るためには、達成が不可欠である」と、強い決意を強調なさいました。
🌎「実質ゼロ排出」の意味と、なぜ今、法制化なのか
実質ゼロ排出とは、「ネット・ゼロ」とも呼ばれる概念で、排出される温暖化ガスの量と、森林による吸収や、カーボンキャプチャー(CO2を回収・貯留する技術)などによって大気中から除去される量が相殺され、全体として排出量がゼロになる状態を指します。完全に排出をなくすことは難しいため、排出せざるを得ない分を技術などで「差し引きゼロ」にするという考え方です。イギリスは、この目標をクリーンエネルギーなどの技術革新を促す成長戦略と位置づけ、さらに大気汚染による健康被害の緩和にもつなげることを目指しているとのことです。
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この取り組みの背景には、パリ協定という国際的な枠組みがあります。これは、世界の平均気温の上昇を産業革命前より2度未満、努力目標として1.5度未満に抑えることを目指し、21世紀後半に温暖化ガス排出の実質ゼロを追求するというものです。しかし、国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2018年には世界の排出量が2年連続で過去最高を記録しており、対策のさらなる加速が求められています。この危機感こそが、各国をより厳格な目標設定へと動かしているのです。
🇪🇺 欧州勢が足並みをそろえる「実質ゼロ」への挑戦
イギリスの新目標設定は、欧州の主要国が気候変動対策で足並みをそろえつつある流れを象徴しています。エマニュエル・マクロン仏大統領は、すでに2050年までの温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す方針を表明していました。また、ドイツのアンゲラ・メルケル首相も、2019年5月の国際環境会議で、50年までの実質ゼロを目指す議論を開始する考えを示されています。欧州議会選で環境政党が勢力を拡大するなど、欧州全体で温暖化問題への意識が急激に高まっていることが見て取れます。
イギリス政府は、この新目標の導入にあたり、主要な国々が同じ目線を持つことを重視すると表明しています。他国が今後どのような気候変動対策目標を導入するかを注視し、イギリス企業が国際競争上不利にならないか、5年以内に確認する方針も示しています。このような他国の動向を見極める姿勢は、国内産業への配慮と国際的なリーダーシップの発揮という、二つの難しい要素のバランスを取ろうとする意図がうかがえます。
🗣️ SNSの反響と編集者としての見解
このイギリス政府の発表に対し、SNS上では「2050年実質ゼロ」という具体的な目標と、それを法律で定めるという点に大きな反響が寄せられています。「ついにG7で具体的な法制化の動きが出た!」「これは世界を変える一歩になるはずだ」といった期待の声が多く聞かれ、特に若い世代からの環境問題への関心の高まりを感じさせるものでしょう。一方で、「企業の負担が増えるのではないか」「本当に技術が間に合うのか」といった、実現性や経済的な影響に対する懸念の声も一部で出ています。
私見を述べさせていただきますと、2019年5月にロンドンの英議会前で行われたデモ(写真参照)にも見られるように、市民社会の強い危機感と要求が、政府を動かした側面は非常に大きいと感じています。温暖化対策は、単なる環境政策ではなく、経済のあり方や社会構造そのものを変える「トランジション(移行)」を意味します。このイギリスの決断は、世界中の国々に対し、パリ協定の目標達成に向けた具体的な行動を促す、極めて重要なマイルストーンとなるでしょう。今後の各国、特に日本の動向にも注目が集まることは間違いありません。
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