日本政府は2019年09月19日、外交や安全保障の舵取りを担う国家安全保障局(NSS)において、新たに経済分野を専門に扱う部署を設置する方針を固めました。近年、世界では経済と安全保障が切り離せない「経済安全保障」の重要性が急速に高まっています。この新部署の設立は、首相官邸が主導して複雑な国際情勢に即応するための、極めて野心的な組織改革と言えるでしょう。
NSSは2014年に発足して以来、安倍晋三首相が議長を務める国家安全保障会議(NSC)の事務局として、防衛や外務、警察といった各省庁のエリートが集結してきました。これまでは地域別の担当や戦略企画など6つの班体制で運営されてきましたが、ここに経済の視点が加わります。縦割り行政の弊害を打破し、情報の「一元化」を図ることで、日本の国益をより強固に守る体制が整いつつあるのです。
SNS上では「ようやく日本も経済安保に本腰を入れるのか」「省庁間の壁を超えた連携に期待したい」といったポジティブな反応が目立つ一方で、急速な権限集中を懸念する声も上がっています。しかし、米中貿易摩擦が激化し、次世代通信規格「5G」を巡るハイテク覇権争いが火花を散らす現状において、この決断は不可避だったと私は考えます。経済を武器として使う「エコノミック・ステイトクラフト」への対抗策は急務です。
ハイテク覇権と「債務のわな」に立ち向かう司令塔の役割
新部署が担当する領域は多岐にわたります。なかでも注目すべきは、次世代通信の柱となる5G技術の安全確保や、他国へのインフラ協力のあり方です。米国が安全保障上のリスクを理由に中国製機器の排除を呼びかけるなか、日本も2018年12月に機密漏洩の恐れがある機器の政府調達を避ける方針を決定しました。こうした高度な政治的判断を、経済の専門知識を持って支えるのが新部署の役割です。
また、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を巡る問題も看過できません。途上国に対して過剰な融資を行い、返済が滞った際に港湾などの権益を奪う「債務のわな」は、経済の枠を超えた軍事・安保上の脅威となり得ます。特定の省庁だけで対処するには荷が重いこれらの課題に対し、経済産業省や総務省から精鋭を集め、官邸直轄で戦略を練る仕組みは、まさに現代の「経済戦争」における本営となるはずです。
私は、この組織再編こそが日本の外交力を一段階引き上げる鍵になると確信しています。2019年07月には韓国への半導体材料の輸出管理厳格化が行われましたが、こうした経済措置が安全保障に直結する事例は今後さらに増えるでしょう。米国の国家経済会議(NEC)をモデルとしたこの新体制が、情報の断絶を防ぎ、日本の進むべき道を照らす灯台となることを切に願ってやみません。
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