原油価格下落の真相!サウジ石油施設攻撃でも「弱気」が続く理由と世界経済の暗雲

相場用語には、価格が急騰した後に元の水準へ戻ってしまう「行って来い」という言葉が存在します。現在の原油市場は、まさにこの言葉を体現する奇妙な動きを見せています。2019年09月14日、サウジアラビアの石油施設が大規模な攻撃を受けるという衝撃的な事件が発生しました。本来であれば供給不安から価格は高騰し続けるはずですが、驚くべきことに現在の価格は事件前よりも安値で推移しているのです。

2019年10月初旬には、米原油先物が1バレル50ドル台、欧州のブレント先物も56ドル台を記録し、同年08月上旬以来の低水準となりました。SNS上では「これほどのリスクがあっても上がらないのか」「ガソリン代が安くなるのは助かるが、経済が心配」といった、困惑と先行きへの不安が入り混じった声が多数寄せられています。世界最大の輸出国が受けたダメージは、市場関係者が想像していた以上に深刻なはずでした。

今回の事件で注目されたのが「スペア・キャパシティー」という専門用語です。これは、主要な産油国が需要の急増に備えて保持している「予備の生産能力」を指します。2000年代に中国が急成長を遂げて以来、この指標は市場分析の要となってきました。しかし、今回の攻撃により日量500万バレル以上の能力が失われ、統計開始以来初めてこの予備力が一時的に「マイナス」に陥るという、まさに異常事態が現実のものとなったのです。

これほどの中東リスクを突きつけられながら、なぜ原油相場は冷え込んでいるのでしょうか。サウジアラビア側が生産能力の早期回復を宣言し、供給面での安心感を与えたことも一因でしょう。しかし、それ以上に市場を支配しているのは、世界経済の減速に対する強烈な懸念です。専門家の分析によれば、現在の原油価格のトレンドを決定づけているのは供給の多寡ではなく、景気に左右される「需要の強弱」そのものなのです。

景気のバロメーターとされる米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数は、2019年10月に発表された数値で約10年ぶりの低水準を叩き出しました。さらに、2019年10月15日には国際通貨基金(IMF)が今年の世界成長率を3.0%へと下方修正しています。こうした指標が悪化すると、将来の原油需要も減ると予測されるため、投資家たちの間では「今は買いではない」という弱気な姿勢が連鎖的に広がっていくのです。

もし現在の景況感低迷がこのまま続けば、原油相場は昨年の同時期と比較して20%以上も下落する計算になります。その場合、2019年末には米原油先物が35ドル前後まで暴落するという衝撃的なシナリオも現実味を帯びてきます。実際に、先物市場での売り注文は2019年09月中旬から短期間で8割も急増しており、プロの投資家たちは世界経済のさらなる冷え込みに賭けているのが現状と言えるでしょう。

筆者の視点としては、無人機による攻撃という「新しい脅威」が可視化されたにもかかわらず、それを景気後退の恐怖が上回っている現状に、世界経済の根深い病理を感じざるを得ません。供給網の物理的な破壊よりも、消費者の財布の紐が締まることの方が、市場にとっては恐ろしい「リスク」なのです。年末に向けて相場が反転するには、世界が抱える構造的な経済課題を解消する劇的な変化が必要不可欠となるでしょう。

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