2019年6月、米連邦準備制度(FRB、連邦準備制度理事会)による利下げへの期待が、金融市場で急速に高まってまいりました。この記事を執筆している時点では、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果はまだ発表されておりませんが、この利下げ観測が日本の株式市場にどのような影響をもたらすのか、その考えられるシナリオを深掘りしてみたいと思います。
そもそも、現在の米国経済は比較的堅調に推移していると見られます。過去のFRBの利下げ局面を振り返ってみますと、2007年のような金融不安が非常に強まっていた特殊な時期を除き、米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景況指数が50という好不況の境目を割り込んだ局面で行われることが通例でした。しかし、今のところこの製造業景況指数は50をまだ上回っており、特に景気の動向を広く示すISM非製造業景況指数(サービス業など)は、さらに高い水準で推移しております。この状況下で利下げが行われるとすれば、それは極めて異例な事態と言えるでしょう。この異例の利下げが、市場にどのようなメッセージを発するのか、投資家の皆さまの注目が集まっています。
では、FRBが実際に利下げに踏み切った場合、株式市場はどのように反応するのでしょうか。最大のポイントとなるのは、米国経済がリセッション、すなわち景気後退に陥るか否かという点にあります。もし景気後退を伴う利下げであれば、それは株式市場にとっては明確な売りサインとなる可能性が高く、利下げをしても株価の下落を食い止めるのは困難となるでしょう。投資家からは「金融政策の手詰まり感」といった厳しい見方が出るかもしれません。一方で、リセッションを伴わない利下げ、すなわち景気の下振れリスクを未然に防ぐための「予防的な利下げ」であった場合は、過去の傾向から見ても株式市場にとっては買いサインとなり、日米両国の株式が大幅に上昇するケースが見られております。この「リセッションの有無」という分水嶺が、今後の相場を大きく左右する鍵を握っていると言えましょう。
為替と景気敏感株の行方:単純な図式は通用しない?
為替市場では、利下げ観測が強まる過程で、米国債の金利が低下し、円高圧力が強まる傾向があります。しかし、実際に利下げが実行されると、そのショックや期待感が織り込まれることで、円安に反転する動きが過去には見られました。今回もその例外ではないようです。米国金利は既に、FRBの利下げを強烈に織り込んで低下しており、先物市場の動向を見る限りでは、年内に2.5回、さらに来年にかけて合計4回もの利下げが実施される可能性を織り込みつつあります。これは、完全にではないにせよ、市場が景気後退の可能性を半分ほどは既に織り込んだ状態にあることを示唆しております。そのため、「利下げ=円高」という単純な図式がそのまま当てはまるとは考えにくいでしょう。利下げによる影響は、単に金利差だけではなく、市場の期待や景気見通しによって複雑に変化するものと、私は見ています。
過去の**「リセッションを伴わない利下げ」後の物色の傾向として、金融緩和による景気浮揚効果と、その後の円安傾向が相まって、輸出関連企業などの景気敏感株が特に上昇しやすい傾向がありました。企業業績の改善期待が高まり、投資家のリスクオンの姿勢が強まるからです。例えば自動車や電機といった、海外での売上比率が高い銘柄が恩恵を受ける可能性が高いでしょう。現時点ではFRBが利下げに踏み切るかどうかの判断は不透明ですが、このFRBの動向は株式市場を大きく揺り動かす最重要ファクター**であることは間違いなく、投資家の皆さまにとって、その決定に注目が欠かせない状況にあると言えましょう。
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