国内電炉メーカーの最大手である東京製鉄は、2019年10月21日に11月契約分の鋼材販売価格を全品種で据え置く方針を明らかにしました。価格改定を見送るのは2カ月ぶりのことで、前月に実施した値下げの効果や、その後の市場動向を慎重に見極める狙いがあるようです。具体的な契約単価は、ビルの骨組みなどに使われるH形鋼が1トンあたり8万3000円、自動車や家電の材料となる熱延コイルが6万7000円、船舶や橋梁に用いられる厚鋼板が7万7000円に設定されています。
現在の国内需給について同社の今村清志常務は、薄板などの鋼板類において「在庫の調整に想定以上の時間を要している」と分析しています。一方で、建築用の形鋼類に関しては、2020年に向けて延期されていた大型プロジェクトが再び動き出すとの明るい展望を示しました。この発表を受けてSNS上では、「建設ラッシュの再来で鉄鋼株に注目が集まるかも」「コストが安定するのは建設業界にとって朗報だ」といった、先行きをポジティブに捉える声が数多く寄せられています。
不透明な海外市況と底打ちへの兆し
世界情勢に目を向けると、米中貿易摩擦の長期化が影を落とし、鋼材価格の弱含みが続いているのが現状です。ここで言う「弱含み」とは、相場が下落傾向にある、あるいは活気がない状態を指す専門用語です。特に熱延コイルを中心に価格下落が顕著ですが、アジア市場では採算割れを嫌ったメーカーが販売を控える動きも見られ始めました。今村常務は、こうした供給側の調整によって、国際的な価格下落もようやく終焉に近づいているとの認識を強調しています。
編集者の視点から見れば、今回の価格据え置きは、荒波の中で一度錨を下ろして周囲を確認するような、非常に戦略的な判断だと言えるでしょう。世界的な景気減速懸念は根強いものの、国内のインフラ投資や都市再開発という強力な下支えがある点は心強い限りです。鉄鋼市場は産業の米とも呼ばれる重要な指標ですから、底打ちのサインが本物であれば、日本経済全体に波及するポジティブな影響が期待できるのではないでしょうか。今後の市況回復を静かに、しかし確信を持って見守りたいところです。
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