ビル建築の要とも言える「生コンクリート」の価格が、いま大きな転換期を迎えています。2019年11月26日現在、東京や神奈川といった首都圏の生コンクリート協同組合が相次いで値上げを打ち出しており、建設業界には緊張が走っているのです。この動きに対し、SNS上では「建築コストが上がれば住宅価格にも響くのではないか」といった懸念や、「人手不足に続くコスト増は厳しい」という現場の声が数多く寄せられています。
具体的な動きを見ていきましょう。東京地区生コンクリート協同組合は、2020年04月契約分より1立方メートルあたり1000円、率にして約7%の引き上げを表明しました。これに先駆け、神奈川県の横浜や湘南エリアの協同組合も5%から7%程度の価格改定を打ち出しており、値上げの波は着実に広がっています。生コンとは、工場で練り混ぜられ、まだ固まっていない状態のコンクリートを指しますが、その品質を維持するためのコストが限界に達しているのです。
値上げの背景にある「骨材」の枯渇と物流コストの壁
今回の価格改定の主な要因は、生コンの主要な材料である「骨材」の価格高騰にあります。骨材とは、砂利や砂のことを指し、コンクリートの容積の約7割を占める重要な原料です。かつては千葉県の君津市や富津市といった首都圏近郊で安定して採取できていましたが、近年は資源の枯渇が深刻化しています。質の良い砂が減少したことで、現在は北海道などの遠隔地から運搬せざるを得ず、その高い運賃が生コンメーカーの経営を強く圧迫しているのが実情です。
さらに、接着剤の役割を果たすセメント自体の値上がりも無視できません。セメントメーカー各社は、深刻なドライバー不足に伴う物流費の上昇を理由に、2018年04月出荷分から1トンあたり1000円の値上げを断行しました。生コンメーカーはその一部を負担してきましたが、いよいよ自社努力だけでは吸収しきれなくなったというわけです。原材料と物流、この二重苦が今回の強気な価格交渉の背景にあるといえるでしょう。
東京五輪後の需要低迷が招く、ゼネコンとの厳しい攻防
しかし、この値上げ交渉がスムーズに進むとは限りません。皮肉なことに、2020年の東京五輪に向けた建設ラッシュが一巡し、生コンの需要自体は冷え込みを見せているからです。統計によれば、関東1都3県の出荷量は2019年09月まで8カ月連続で減少しています。編集者の視点から見れば、供給側がコスト増を訴える一方で、市場のニーズが縮小しているという「ミスマッチ」が起きている今の状況は、極めて厳しい舵取りを迫られていると感じます。
買い手であるゼネコン(総合建設会社)側も、簡単には首を縦に振りません。多くの現場ではすでに予算が確定しており、工事の途中で資材価格が上がることは利益を直接削ることに繋がるからです。次なる首都圏の再開発が本格化するのは五輪後と目されており、当面は需要の回復が見込めない中での交渉となります。今後の建設業界全体のコスト構造にどのような影響を与えるのか、私たちはこの粘り強い交渉の行く末を注視していく必要があるでしょう。
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