2019年もいよいよ終盤を迎え、国内の新規株式公開、いわゆるIPOの全容が明らかになってきました。今年の市場を象徴する驚きのデータとして、上場を果たす企業の約2割が「赤字」の状態であることが判明したのです。これは過去10年間で最も高い比率であり、投資家の間でも「利益よりも成長性を重視する時代が来た」と大きな話題を呼んでいます。
今年のIPO銘柄数は、2018年とほぼ同水準の87社となる見通しです。2019年11月26日時点で既に64社が上場を済ませており、年内に残り23社が続く予定となっています。2015年以降、毎年90社前後で安定して推移しているIPO市場ですが、その中身を覗くと、直前期の最終損益が赤字である企業の割合が18%にまで急増している点が非常に特徴的です。
急増するSaaS企業が変える上場の常識
なぜ、これほどまでに赤字での上場が相次いでいるのでしょうか。その背景には「SaaS(サース)」と呼ばれるビジネスモデルの台頭があります。これは「Software as a Service」の略称で、インターネットを通じて必要な機能を必要な分だけ利用するソフトウェアの提供形態を指します。月額課金制のサブスクリプション型が一般的で、現代のビジネスには欠かせないインフラとなりつつあります。
SaaS企業は、サービス開始当初に莫大な開発費や広告宣伝費を投入するため、どうしても先行投資による赤字が膨らみがちです。しかし、一度契約数が損益分岐点、つまり利益と損失がゼロになる地点を超えれば、その後は積み上げ方式で安定した収益を生み出し続ける強みを持っています。早期にIPOを行うことで知名度を爆発的に高め、一気にシェアを拡大しようという戦略が、今のトレンドと言えるでしょう。
実際に2019年の時価総額上位を見渡すと、名刺管理サービスのSansanやビジネスチャットのChatworkといったSaaS関連の顔ぶれが目立ちます。12月に上場を控えるクラウド会計ソフトのフリーも、巨額の赤字を抱えながらも市場からは熱烈な視線を浴びています。SNS上では「赤字でも未来を買う投資だ」と期待する声がある一方で、「本当に黒字化できるのか」という慎重な意見も飛び交っています。
投資家に問われる「真の成長性」を見抜く目
東証マザーズ市場などでは、赤字であっても高い成長性を証明できれば上場が認められる傾向にあります。しかし、現実は甘くありません。2010年から2018年までに赤字で上場した企業のうち、現在黒字化できているのはわずか3割程度にとどまっています。アメリカでもウーバーなどの巨大赤字企業が上場後に苦戦しており、未上場時の「期待値」が膨らみすぎているリスクには注意が必要です。
とはいえ、日本国内のIPO銘柄のパフォーマンスは決して悪くありません。2019年のIPO株の値動きを示す指標は、日経平均株価の上昇率を大きく上回っており、上場後に購入した一般投資家もしっかりと利益を得ている状況です。単なる「赤字」を恐れるのではなく、その裏にあるビジネスモデルがどれほど強固で、将来的にどれだけの利益を積み上げられるのかを見極める力が、今の編集者視点でも最も重要だと感じます。
コメント