2019年11月30日、アジア各国の経済競争力を左右する「エネルギーコスト」に注目が集まっています。日本貿易振興機構(JETRO)が実施した最新の調査によると、アジアの主要都市の中で、製造業向けの電気料金が最も安価なのは韓国のソウルであることが判明しました。平日昼間に工場などが使用する料金を基準にすると、1キロワット時あたりわずか0.06ドル(約6.6円)という、10年前から据え置かれた驚異的な低価格を維持しています。
SNS上では「韓国の電気代がこれほど安いとは知らなかった」「日本の製造業が苦戦するのも納得のコスト差だ」といった、驚きと焦燥が入り混じった反応が数多く見受けられます。実際にソウルの料金を東京と比較すると、その差は2倍以上に及んでおり、急激な経済発展に伴って公共料金が右肩上がりとなっているハノイやジャカルタといった東南アジアの都市よりも、はるかに安く抑えられている実態が浮き彫りになりました。
製造業を支える「国策」の力。サムスンなどの国際競争力を裏から支える仕組み
韓国がこれほどまでに低価格を実現できている背景には、徹底した国家戦略が存在します。韓国政府は「国策」として安価な電力を供給し続けることで、サムスン電子を筆頭とする巨大な製造業が世界市場で戦うための、いわば強力な「武器」を提供してきたのです。ここで言う「国策(こくさく)」とは、国の利益のために政府が主導して進める方針を指し、電力という産業の生命線を低コストに保つことで、国を挙げた輸出支援を行っているわけです。
一メディア編集者としての私の主張は、この圧倒的なコストメリットが韓国企業の躍進を下支えしてきた事実は否定できないということです。日本でも電気料金の高騰が叫ばれるなか、インフラコストの差がそのまま製品の価格競争力に直結する製造業において、ソウルの低価格戦略は非常に大きな脅威となっています。しかし、この「安さ」という恩恵の裏側では、現在、非常に危ういバランスの上に成り立つ歪みが生じ始めていることも見逃せません。
赤字転落の「韓国電力公社」。上場企業としてのジレンマと料金値上げの予兆
実は、安すぎる料金設定は電力供給側の経営を圧迫しています。実質的に独占的な供給を担う韓国電力公社は、燃料コストの上昇という荒波を被り、2018年12月期には営業赤字に転落してしまいました。営業赤字とは、本業である電力の販売だけでは経費を賄えなくなった状態を指します。韓国政府が株式の51%を握る筆頭株主であるとはいえ、同社は株式を公開している上場企業であり、営利団体としての責任も負っています。
2019年11月30日の現在、世界的な株主至上主義の流れを受け、投資家からの経営改善を求める圧力は日増しに強まっています。赤字を垂れ流してまで安売りを続けることは、健全な企業運営の観点からは逸脱しており、今後は株主からの批判が引き金となって、長年維持されてきたソウルの格安料金も上昇局面に入る可能性が濃厚です。国家による強力な保護がいつまで続くのか、アジアのビジネス勢力図を占う上で、韓国の電力事情からは目が離せません。
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