世界のエネルギー市場で今、大きな地殻変動が起きています。これまで「安さ」が代名詞だった米国産原油の価格が上昇傾向にあり、国際的な指標である欧州産の北海ブレント原油との価格差が急速に縮まっているのです。2019年11月18日現在の市場データを見ると、米国産の指標であるWTIは1バレル57ドル台で取引される一方で、欧州産は63ドル台となっており、その差はわずか5ドルから6ドル程度にまで狭まりました。
SNS上では、これまで米国産を積極的に買い付けてきた投資家や企業から「利益確定のタイミングが難しい」「仕入れコストの上昇が懸念される」といった驚きの声が上がっています。わずか半年前の2019年5月ごろには10ドル以上の開きがあったことを考えれば、この数ヶ月での変化がいかに急激であるかが分かります。夏場には一時的に3ドル台まで接近する場面もあり、市場関係者の間では「米国産=割安」というこれまでの常識が崩れ去ろうとしているのです。
物流の目詰まり解消が価格を押し上げる
なぜ、これほどまでに米国産の価格が強含んでいるのでしょうか。その鍵を握るのは、米国内のインフラ整備にあります。米国では「シェール革命」によって原油生産量が爆発的に増えましたが、これまでは油田から港や製油所へ運ぶためのパイプラインが不足し、現物が現地に滞留してしまう「ボトルネック現象」が起きていました。しかし、2019年の夏に大型のパイプラインが相次いで稼働したことで、この物流の滞りが劇的に改善されたのです。
専門用語で解説すると、この「ボトルネック」とは瓶の首が細くなっているように、全体の工程の中で一部の処理能力が低いために全体の流れが止まってしまう状態を指します。米エネルギー情報局(EIA)の報告によれば、原油の中継地点であるオクラホマ州クッシングの在庫は、2019年11月上旬時点で約4600万バレルまで減少しました。これは年央と比較して13%も少ない水準であり、需給が引き締まっている証拠と言えるでしょう。
欧州経済の停滞と日本企業への逆風
一方で、比較対象となる欧州の北海ブレント原油は、景気後退の懸念から上値が重い展開が続いています。ドイツの経済減速や、先行きが見えない英国のEU離脱問題などが欧州経済に影を落としているためです。9月に発生したサウジアラビアの石油施設への攻撃による供給不安も沈静化しており、需給バランスが緩んだことが価格抑制の要因となっています。米国内の需給改善と欧州の需要減、この二つの波が重なり、価格の逆転現象に近い状況を作り出しました。
私自身の見解としては、この変化は単なる一時的な価格変動ではなく、米国が名実ともに「エネルギー大国」として世界市場での支配力を強めた結果だと考えています。これまでは安さで勝負していた米国産が、安定した供給網を手に入れたことで正当な市場価値で評価されるステージに移ったのです。しかし、日本企業にとっては、安価な調達先が一つ減ることを意味します。海上運賃の高騰も重なり、米国産原油の調達が一服している現状は、日本のエネルギー戦略に再考を迫るものになるでしょう。
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