日本のビジネスシーンを長年悩ませてきた「紙の原本信仰」がついに終わりを迎えるかもしれません。総務省は2019年11月28日、企業間でやり取りされる請求書などの電子書類が「本物」であることを公的に証明する認定制度を、2020年度から創設する方針を固めました。
これまでデジタルデータはコピーや改ざんが容易であるという懸念から、重要書類の電子化はなかなか進展しませんでした。しかし、国がお墨付きを与える新制度の登場により、信頼性の壁が取り払われます。ネット上では「ようやくハンコや印刷の呪縛から解放される」と期待の声が広がっています。
信頼を担保する2つの鍵「タイムスタンプ」と「eシール」とは?
今回の制度で鍵となるのが、2つの高度な証明技術です。まず2020年度に導入される「タイムスタンプ」は、その書類が「いつ」作成され、それ以降に内容が書き換えられていないことを証明する技術です。これにより、過去のデータ改ざんを完全に防ぐことが可能になります。
続く2021年度には、組織の身元を証明する「eシール」の認定も始まります。これは、いわば「企業の角印」のデジタル版です。発行元が確かにその企業であることを保証する仕組みで、欧州では既に普及しています。これらを組み合わせることで、電子書類の信頼性は紙と同等、あるいはそれ以上になるでしょう。
専門用語の解説になりますが、eシールは特定の個人ではなく「組織」が発行したことを証明する点が特徴です。メールで届く偽の請求書詐欺などが社会問題化する中で、この技術は企業の防衛策としても極めて重要な役割を果たすことが期待されています。
インボイス制度への対応と劇的な業務効率化
この動きの背景には、2023年10月1日に導入予定の「インボイス制度」があります。複雑な税率計算が必要になるこの制度において、適格な事業者であることを証明する手段として電子証明は不可欠です。国もこのタイミングを見据え、デジタル化への環境整備を急いでいるのです。
個人的な見解を述べさせていただきますと、この改革は単なる手続きの変更に留まりません。ある試算によれば、電子化の進展で大企業の経理業務が月間5万時間も削減されるといいます。これは日本の生産性を根本から引き上げる、まさに「働き方改革」の本丸と言えるのではないでしょうか。
建築士が設計図を保存するためだけに印刷するといった、非効率な慣習が消え去る日は目前です。法令面での位置づけが明確になれば、中小企業も含めたデジタル転換が一気に加速するでしょう。私たちは今、事務作業のストレスから解放される歴史的な転換点に立ち会っているのです。
コメント