北欧の優等生として知られるノルウェーの通貨「クローネ」が、今、かつてない試練の時を迎えています。2019年11月28日現在、市場ではクローネ売りが加速しており、記録的な安値水準で推移している状況です。ロンドン市場の関係者からは、北欧経済の先行きを不安視する声が日増しに強まってきました。
通常、ある国の経済を安定させるために中央銀行が「政策金利(銀行に貸し出す際の基準となる金利)」を上げれば、その国の通貨は投資家にとって魅力的になり、価値が上がるのが経済のセオリーです。実際にノルウェー中央銀行は、2019年に入ってから既に3回もの利上げを断行しており、本来であればクローネ高が進んでもおかしくない局面でした。
しかし、この教科書通りの動きを阻んでいるのが、同国の経済を支える屋台骨である資源と食品の価格低迷です。ノルウェーの主力輸出品である原油、そして世界的なシェアを誇るサーモンの取引価格が下落したことで、輸出収益が悪化。金利上昇のメリットを、実体経済の不透明感が打ち消してしまった形と言えるでしょう。
欧州の共通通貨であるユーロに対する動きを見ると、その下落幅の大きさに驚かされます。2019年7月下旬の時点では、終値ベースで1ユーロ=9.7クローネ前後を維持していました。ところが、夏場を過ぎてから値下がりは一気にスピードを上げ、投資家たちの間に動揺が広がったのです。
ついに2019年10月下旬には、取引時間中に1ユーロ=10.3クローネ前後という史上最安値を叩き出しました。足元では10.1クローネ近辺までわずかに戻しているものの、依然として予断を許さない状況が続いています。SNS上では「北欧旅行が安くなる」という旅行者の期待がある一方で、現地の物価高騰を懸念する声も目立ちます。
私は、今回の通貨安は単なる一時的な現象ではなく、資源依存型経済からの脱却を迫る警鐘ではないかと考えています。たとえ金利を上げたとしても、外貨を稼ぐ力が弱まれば通貨の信頼は維持できません。豊かな福祉国家を支えるクローネが、再びかつての輝きを取り戻せるのか、世界中のトレーダーがその動向を注視しているに違いありません。
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