インドとパキスタンが長年領有権を争っているカシミール地方の対立が、ついに両国の実体経済へ深刻な影を落とし始めています。2019年8月5日にインド政府がカシミール州の自治権剥奪を決定して以来、緊張は一気に高まりました。現在、パキスタン側は抗議として貿易停止を宣言していますが、その代償は想像以上に重くのしかかっています。
SNS上では「政治の対立でなぜ市民が苦しまなければならないのか」といった悲痛な声が溢れており、特に医療現場での混乱を不安視する意見が目立ちます。パキスタンの首都イスラマバードでは、インドによるカシミール統治への抗議を示す電光掲示板が設置され、緊迫した空気が漂い続けています。
命を脅かす医薬品不足とコスト増の衝撃
貿易停止による最も深刻な影響の一つが、インドが得意とする安価な「ジェネリック医薬品」の供給停止です。ジェネリック医薬品とは、新薬の特許が切れた後に同じ成分で製造される低価格な薬のことですが、これが途絶えたことでパキスタンの病院や市民生活に大きな支障が出ています。
現在は中東などからの代替品で急場をしのいでいますが、輸送費などの影響で価格が跳ね上がっており、家計を圧迫する要因となっています。また、パキスタンの主力産業である衣服製造に欠かせない「インド産の綿」も輸入が止まり、米国やブラジル産への切り替えを余儀なくされるなど、コスト増による景気後退が強く懸念される状況です。
カシミールの経済損失は1500億円を突破
一方、インド側も決して無傷ではありません。カシミール商工会議所の試算によると、外出禁止令や営業制限、観光客の激減による経済損失は、2019年12月時点で既に14億ドル、日本円にして約1500億円以上に達しています。地域の特産品であるシルクカーペットや工芸品の供給も完全にストップしており、地元の産業は崩壊の危機に瀕しています。
特筆すべきはデジタル環境の遮断です。現地ではインターネットやSNSが使えない状況が続いており、商談が成立しないばかりか、若者たちが勉強すらできないという異常事態に陥っています。経済のデジタル化が進む現代において、通信を遮断することは地域全体の成長を止めるに等しく、非常に危うい政策であると言わざるを得ません。
巨大市場の可能性を阻む政治の壁
2019年現在、パキスタンの人口は約2億1650万人に達し、インドと合わせれば2030年には世界人口の2割を占める巨大経済圏になるポテンシャルを秘めています。生活習慣が似ている両国にとって、本来はお互いが最高のビジネスパートナーになれるはずですが、現状では航空便さえ止まり、人の交流も厳しく制限されています。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)からの離脱を示唆しているインドにとって、隣国パキスタンは魅力的な輸出先であるはずです。政治的な信条も重要ですが、国民の命や生活基盤である経済を人質にするような対立は、長期的には両国の国力を削ぐ結果になるでしょう。今こそ経済界の声に耳を傾け、現実的な関係改善を模索する時ではないでしょうか。
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