2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を目前に控え、日本中がかつてない熱気に包まれようとしています。注目すべきは競技だけではありません。現在、東京都や政府、大会組織委員会が総力を挙げて推進している「文化プログラム」が、全国各地で驚きと感動の渦を巻き起こしているのです。
2019年12月08日、岡山県倉敷市では「東京キャラバン in 岡山」が開催されました。これは野田秀樹氏が発案した「文化混流」を掲げるプロジェクトで、第一線で活躍する表現者と地域の伝統芸能がぶつかり合い、新しい芸術を創り出す試みです。SNS上では「思わず一緒に踊りたくなった」といった興奮の声が溢れ、その熱狂ぶりがうかがえます。
この岡山公演で披露されたのは、実話をベースにした約1時間の群像劇でした。物語の主人公は、生活のために岡山の伝統芸能「備中神楽(びっちゅうかぐら)」を諦め、東京のホテルに就職した男性です。備中神楽とは、古事記や日本書紀の神話を題材にした岡山県が誇る民俗芸能ですが、彼は都会での成功後も、郷土の舞が忘れられず帰郷を決意します。
東北から沖縄まで!日本中を巡る感動のバトン
「東京キャラバン」はこれまで東北や四国、九州と全国を巡業してきました。その土地ならではの文化を吸収し、パレードやサーカスのような多彩な形態で披露されています。この旅は2019年の年末から2020年の年始にかけて開催される北海道公演で一度締めくくられ、2020年の本番では、全国で磨き上げたパフォーマンスの粋が東京に集結する予定です。
また、東北復興を象徴するプロジェクトとして、クリエイティブディレクターの箭内道彦氏がプロデュースする巨大人形「モッコ」も注目を集めています。モッコは東北各地を巡りながら人々の復興への想いを集め、最終的に東京へ届けるという大役を担っています。まさに、日本人の心を一つにつなぐ壮大な文化の旅と言えるでしょう。
さらに政府が主導する「日本博」も、2020年春に北海道で開館する「ウポポイ(民族共生象徴空間)」でのアイヌ文化発信や、沖縄の伝統芸能「組踊(くみおどり)」の公演など、驚くべき規模で展開されています。組踊とは、歌や踊り、台詞で構成される沖縄独自のミュージカルのような芸能で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている貴重な財産です。
文化観光の夜明けか、それとも混乱か
文化庁によれば、こうした関連イベントは2019年11月時点で累計2万件を突破しました。坪田知広参事官が「文化観光を振興する絶好のチャンス」と意気込む通り、世界へ日本の美意識を発信する準備は整いつつあります。しかし一方で、国や都、組織委が別々に事業を展開しているため「名称が似ていて分かりにくい」との厳しい声があるのも事実です。
編集者の視点から言わせていただければ、この「雑多さ」こそが、多様な文化が共存する日本らしさの表れではないでしょうか。一つひとつのイベントが独立しているからこそ、どこに住んでいても最高の芸術に触れる機会が生まれています。2020年を単なるスポーツの祭典で終わらせるのはあまりにも勿体ない話です。
五輪をきっかけに、私たちが自国の文化の豊かさに改めて気づく。それこそが、大会が残すべき真のレガシー(遺産)だと私は考えます。皆さんも、ただの観客で終わるのではなく、この祭典の一部となって一緒に踊ってみませんか。日本中が劇場に変わる瞬間は、もうすぐそこまで来ています。
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