EV普及の鍵を握るレアアース価格が急落!中国・ミャンマー間の輸入再開がもたらす市場の激変と今後の供給リスク

次世代モビリティの主役である電気自動車(EV)にとって、心臓部とも言えるモーターの性能を左右するのが強力な永久磁石です。その不可欠な材料であるレアアースの市場価格が、いま大きな転換期を迎えています。2019年12月05日現在の状況では、代表的な元素であるネオジムやジスプロシウムが、わずか半年ほど前の高騰ぶりが嘘のように、約7カ月ぶりの安値圏まで下落しているのです。

今回の価格下落の最大の引き金となったのは、世界最大のレアアース加工技術を誇る中国が、隣国ミャンマーからの鉱石輸入を再開したことでした。SNS上では「米中対立の武器として価格が釣り上がっていた時期に比べれば、少しは落ち着くのか」といった安堵の声も見られますが、一方で「中国の気まぐれに振り回される市場の危うさは変わらない」といった鋭い指摘も飛び交っています。

具体的に数字を見ていくと、ネオジムは2019年11月末時点で1キロ54ドル前後を推移しており、ピークだった同年6月から2割も値下がりしました。また、磁石に耐熱性を与えるジスプロシウムも1キロ250ドル前後まで軟化しています。ここで言う「レアアース(希土類)」とは、高度な工業製品に欠かせない希少な金属元素の総称であり、わずかな添加で製品の性能を劇的に向上させるため「産業のビタミン」とも呼ばれています。

もともと、ミャンマー国境付近では環境破壊を伴う違法な採掘が横行しており、中国の雲南省当局はこれを取り締まるため、2018年11月に輸入を全面的に停止していました。安価なミャンマー産が市場から消えたことで供給不安が広がり、さらに米中貿易摩擦の激化に伴う「輸出制限への懸念」が拍車をかけ、2019年前半の相場高騰を招いていたという背景があります。

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不透明な輸入再開と拭いきれない供給停止の懸念

しかし、事態は2019年9月末ごろに急変しました。止まっていたはずのミャンマーからの輸入が突如として解除された模様なのです。専門商社の関係者ですら「詳細が全くわからない」と首をかしげるほど、この再開のプロセスは不透明なものでした。折しも米中関係に一時的な「休戦」の兆しが見えたことで、市場に漂っていた緊張感が一気に緩和され、現在の価格下落につながったと分析されています。

ここで注目すべきは、中国にとってのミャンマーの立ち位置です。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」において、インド洋への出口となるミャンマーは極めて重要な戦略的パートナーです。国際社会から孤立しがちなミャンマーを中国が支持することで両国の絆は深まっていますが、一方で現地での環境保全対策の不備を理由に、再び供給が止まる可能性も十分に考えられるでしょう。

私は、今回の価格下落を「一時的な凪」に過ぎないと考えています。中国はEVの生産量で世界をリードしており、国内の増産だけでは将来的な需要拡大を到底賄いきれません。レアアースは一般的な銅などの金属に比べて市場規模が小さいため、わずかな政治的・地政学的な判断で価格が二転三転してしまいます。安定供給を他国に依存し続ける構造は、依然として大きな火種を抱えたままなのです。

2019年11月には中国政府が生産枠を過去最高水準に引き上げましたが、それでも輸入依存からの脱却には程遠いのが現状です。市場関係者の間では「いつ相場が反転してもおかしくない」という疑心暗鬼が広がっています。私たちは、安値に一喜一憂するのではなく、特定の供給網に依存することのリスクを再認識し、代替技術の開発や調達先の多角化を真剣に模索し続けるべきではないでしょうか。

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