令和最初の冬、高校バスケットボール界の頂点を決める「ウインターカップ2019」男子決勝が2019年12月29日に開催されました。東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館のコートに立ったのは、福岡第一高校と福岡大学附属大濠高校という、同じ福岡県に籍を置く宿命のライバル同士です。大会史上2度目となる同一都道府県勢による決勝戦は、開始前からファンの間で大きな話題を呼び、SNS上でも「実質的な日本一決定戦」「福岡のレベルが異次元すぎる」と熱烈な声が溢れました。
試合は序盤から、連覇を狙う福岡第一が圧倒的な地力を見せつける展開となります。その中心にいたのは、卓越したスピードとパスセンスで観客を魅了するエースガード、河村勇輝選手です。彼は2年前の同大会で福岡大大濠に敗北を喫した際、自分のプレーを完璧に封じ込められた屈辱を片時も忘れていませんでした。その挫折をバネに積み上げてきた猛練習の成果が、この大舞台で鮮やかに結実したのです。身長172センチと小柄ながら、コート全体を支配する彼の存在感はまさに圧巻の一言に尽きます。
福岡第一の最大の武器は、鉄壁の守備から電光石火の攻撃へと繋げる「堅守速攻(けんしゅそっこう)」です。これは、相手の攻撃を組織的なディフェンスで阻止し、ボールを奪った瞬間に全員が猛ダッシュで相手ゴールへ攻め込む戦術を指します。ゴール下で圧倒的な高さを誇る留学生のクベマ・ジョセフ・スティーブ選手が、なんと11本ものシュートブロックを連発して相手の得点源を封鎖。そこから河村選手が光のような速さで前線へ駆け上がり、計11アシストという驚異的な数字で得点を量産しました。
対する福岡大大濠も、伝統の意地を見せて最後まで食らいつきます。しかし、福岡第一の3年生5人が見せた勝利への執念は、それを上回るものでした。試合終盤、福岡大大濠が仕掛けた激しいプレスディフェンスに対しても、河村選手と小川麻斗選手のガードコンビは冷静沈着に対応します。巧みなドリブルワークで相手の網をすり抜け、着実に加点していく姿には、絶対的な王者としての風格が漂っていました。敗れた片峯監督が「ボールへの執着心が及ばなかった」と脱帽するほど、その差は明白でした。
試合終了のブザーが鳴り響いた瞬間、スコアは75対68。福岡第一が見事に2年連続4度目の優勝を成し遂げました。コート上では、勝利した福岡第一の選手たちが、涙に暮れる福岡大大濠の選手たちと固く抱き合う感動的な光景が広がりました。「今の自分があるのは、切磋琢磨してきた彼らのおかげ」と語る河村選手の言葉には、ライバルへの深い敬意が込められています。SNSでは「これぞスポーツの素晴らしさ」「両校に拍手を送りたい」といった感動の投稿が相次ぎ、日本中に勇気を与えました。
1994年の創部以来、福岡第一は常に福岡大大濠という巨大な背中を追い続けてきました。39回の出場を誇る名門・大濠に追いつき、追い越そうとする情熱が、今の福岡第一を形作ったのです。井手口監督が「大濠に追いつけたかは分からないが、この舞台で最高の試合ができた」と語った通り、両校のライバル関係こそが福岡、ひいては日本の高校バスケのレベルを底上げしているのでしょう。私自身、この歴史的な一戦は、単なる勝敗を超えた「魂の継承」であったと感じてやみません。
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