2019年7月、韓国・光州で開催された世界選手権のダイビングプールで、日本飛び込み界に衝撃が走りました。その中心にいたのは、若干18歳の新星、三上紗也可選手です。大舞台の緊張感に包まれる中、彼女はまるでお気に入りの庭にいるかのように、リラックスした様子で歌を口ずさみながら出番を待っていました。この「強心臓」とも言える堂々とした振る舞いに、SNS上では「18歳とは思えない落ち着き」「見ているこちらがワクワクする」といった驚きと期待の声が溢れています。
彼女が挑んだ女子板飛び込みの決勝戦は、まさに圧巻の一言でした。予選から安定したパフォーマンスを見せ、早々と2020年の東京五輪内定を勝ち取ると、本番でも勢いは加速します。板を力強く踏み込み、空中でのキレ味鋭い回転から、吸い込まれるような美しい入水を披露しました。全5回の試技すべてで60点台をマークし、初出場にして世界5位という快挙を成し遂げたのです。三上選手自身も「これまでの競技人生で最高の試合」と胸を張る素晴らしい結果となりました。
驚くべきは、試合中の彼女の精神状態です。三上選手は当時の状況を、集中力が極限まで高まり感覚が研ぎ澄まされる「ゾーン」に入っていたと語っています。実は、試合前に歌を歌うのは彼女の調子が良い証拠なのだそうです。安田千万樹コーチによれば、調子が上がると自分の世界に没入し、頭の中で自然と音楽が流れるリズムが生まれます。会場の熱狂を味方につけ、自分自身の旋律に乗って舞ったことが、今回の歴史的な快挙へと繋がったのでしょう。
挫折を糧に掴んだ「安定感」と運命の転換点
現在の彼女の代名詞である「安定感」は、苦い経験から得た宝物です。2019年3月のワールドシリーズ相模原大会では、序盤のミスが響いて最下位という悔しさを味わいました。完璧主義ゆえに想定外の事態に対応できなかった弱点を克服するため、彼女はメンタルトレーニングを導入します。「ミスすらも想定内」と考える思考法を取り入れたことで、一つの失敗を引きずることなく、次の演技へ冷静に切り替える強さを手に入れました。
また、種目の絞り込みも彼女の才能を開花させる大きな要因となりました。もともとは高飛び込みで頭角を現していましたが、2018年春に負った肘の怪我をきっかけに、体への負担が比較的少ない板飛び込みへ専念することを決意したのです。これは指導者である安田コーチも「神様のお告げ」と感じたほどの大きな決断でした。持ち前の跳躍力が最大限に活かされるようになり、演技の力強さと完成度は飛躍的に向上していったのです。
三上選手は今、鳥取県米子市を拠点に、東京五輪という大きな夢に向かって突き進んでいます。同年代がキャンパスライフを謳歌する中で、彼女は進学や留学という選択肢を一度横に置き、安田コーチとのマンツーマン指導に全てを捧げる日々を選びました。厳しい練習に明け暮れる毎日ですが、彼女の瞳に迷いはありません。周囲を羨むことなく、ただひたすらに板と向き合うその姿は、本物のプロフェッショナルの輝きを放っています。
日本女子飛び込み界において、オリンピックのメダル獲得は未だ成し遂げられていない未踏の領域です。「私がメダル第1号になりたい」と無邪気な笑顔で語る彼女の言葉には、確固たる自信と覚悟が宿っています。2020年の夏、日本の青い水面に彼女が刻む航跡は、きっと黄金色に輝くはずです。若き天才が見せる次なる飛躍から、私たちは一瞬たりとも目が離せそうにありません。編集部としても、彼女の挑戦を全力で応援し続けたいと思います。
コメント