2019年5月の外食市場の動向について、日本経済新聞社がまとめたところ、主要外食企業35社のうち24社で既存店の売上高が前年同月を上回る結果となりました。これは、改元に伴いゴールデンウイーク(GW)が例年よりも長期化したことが大きく影響したと考えられます。この超大型連休中に、ファミリーレストランやファストフードといった業態が、行楽客や家族連れの需要をうまく取り込むことに成功し、大幅な増収を達成しているのです。
特に注目すべきは、連休中に客足が遠のきがちなオフィス街の店舗での客数減少を、郊外店や行楽地周辺の店舗での売り上げ増でしっかり補うことができた企業が好調ぶりを示している点でしょう。外食業界における既存店売上高(きそんてんうりあげだか)とは、新たに出店した店舗を除外し、前年と同じ条件で比較できる店舗のみの売上を指し、その企業の真の実力を測る重要な指標であります。今回の調査で、既存店の客数を開示している33社のうち15社が前年実績を上回っており、客単価も32社中25社が増加するなど、まさにGW特需の恩恵を最大限に享受したと言えるでしょう。
家族連れと行楽客を魅了したファミレス・ファストフードの勝因
GWの恩恵を最も受けたのは、家族連れを主なターゲットとするファミリーレストラン(ファミレス)業界です。調査対象の5社すべてが増収を達成しており、連休中の人々の「外食したい」という気持ちをしっかり捉えました。同様に、ファストフードも5社中4社が増収を記録しています。中でも、日本ケンタッキー・フライド・チキンの既存店売上高はなんと前年同月比16.5%もの驚異的な伸びを見せました。これは、連休に合わせたランチメニューの強化や、キャンペーン戦略が功を奏した結果でしょう。
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また、近年好調が続いている回転寿司チェーンも、連休中のちょっとした晴れ間を狙った需要、いわゆる「チョイ晴れ」需要を取り込み、調査対象の4社すべてが増収となりました。特にスシローは、「創業祭」と銘打って、客単価が高い魅力的なメニューを投入する戦略を展開し、客数と客単価の両方でプラスを達成し、9.9%もの大幅増収を実現しています。連休中の「特別感」を演出するメニューは、消費者の財布のひもを緩める強力なフックとなるのです。私見ですが、大型連休という非日常的な機会に、人々が普段よりも少し贅沢をしたいと考える心理は、外食企業の増収に大きく貢献したと考えられます。
オフィス街の客数減をキャンペーンでカバーした「丸亀製麺」の戦略
一方で、オフィス街など都市部を中心に展開する、麺類やカレー、定食などを提供する業態は、7社中4社が増収という結果でした。都市部は連休中にビジネス客が減少しやすい環境ですが、「丸亀製麺」を運営するトリドールは、この逆境を見事に跳ね返しました。携帯電話会社と連携したキャンペーンとして、特定の曜日に「うどん1杯無料」といった破格のサービスを実施。その結果、客数は前年同月比で20.9%という驚異的な伸長を記録し、既存店売上高も8.7%増となりました。これは、デジタルを活用した集客戦略と価格訴求が、連休中の都市部の客数減を補う上で非常に有効であったことを証明しています。
この結果に対し、SNS上では「無料キャンペーン、知ってはいたけど行くタイミング逃した!やっぱりお得だったんだ」「GWはファミレス行く回数増えた。家族連れにはああいう店が助かる」といった声が聞かれています。また、「都市部の店は休みだったり短縮営業のところが多かった。郊外が強いのは当然かもしれない」といった分析も見受けられ、GW中の人々の移動と消費行動の変化を肌で感じていたことがわかります。
依然として厳しい居酒屋と、見過ごせない店舗運営の課題
不振が続く居酒屋業界は、調査対象6社のうち2社が減収となり、依然として厳しい状況が続いています。客数自体は4社で増加したものの、全体的な売上には結びついていない状況です。これは、連休中、オフィス街の店舗で客数が落ち込んだ分を、郊外店でのファミリー客の増加で何とか補った結果であり、業態全体の構造的な課題は未だ解消されていないと言えるでしょう。
このように、2019年5月の外食市場は、GWの長期化という追い風を受け、主に家族連れや行楽客をターゲットとする業態が好調を維持しました。しかし、記事の結びにもある通り、大型連休は外食企業にとって売上増の機会である一方で、アルバイトの確保や、連休中の多忙による釣り銭不足への対応など、店舗の運営負担が増加したという側面も見逃せません。今後の外食業界は、単に需要を取り込むだけでなく、人手不足の時代にいかに効率的で負担の少ない店舗運営を実現できるかが、持続的な成長の鍵となるでしょう。
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