令和の時代を迎えて最初の冬となった2019年12月31日の大みそか、誰もが慌ただしく過ごす一年の締めくくりに、ある100円ショップの店頭で素敵なドラマが生まれました。店内のレジには年内最終営業日の閉店間際ということもあり、買い出しに追われる人々で長い行列ができていた時のことです。慌ただしい空気の中で順番を待つ人々の心を一瞬で和ませる、ある温かいやり取りが繰り広げられました。
列に並んでいたシニア世代の女性が、自分の会計の際にレジを担当していた40代とみられる女性店員へ「良いお年をお迎えください、寒いので風邪をひかないようにしてくださいね」と優しく声をかけたのです。不意の言葉に店員は少し戸惑いながらも、ぎこちない笑みを浮かべました。客から店員への思いがけないねぎらいの挨拶は、忙しさで張り詰めていた店内の空気を一変させる力を持っていました。
さらにその女性客が「大みそかの大変な日までこうしてお店を開けておいてくださり、本当にありがとうございます」と感謝を重ねて伝えます。すると、それまで事務的で愛想のなかった店員の表情がパッと明るくなり、満面の笑みで「ありがとうございます」と応えました。この言葉をきっかけに、彼女の接客にはまるでお日様のような温もりが宿り、次のお客さんたちにも自然と笑顔が伝染していったのです。
このエピソードがネット上で紹介されると、SNSでは「接客業の経験があるから涙が出るほど共感した」「ちょっとした一言で救われる心が本当にある」といった感動の声が相次いで寄せられました。特に「大みそかや年末年始に働く人への感謝を忘れたくない」という投稿には多くのいいねが集まり、サービスを受ける側と提供する側の関係性を見つめ直す、温かい優しさの輪がネット空間にも広がっています。
元接客アドバイザーの視点から見ても、お客様からいただく「お疲れ様」や「ありがとう」という一言には、働く人のモチベーションを劇的に高める「心理的報酬」という素晴らしい効果があります。これはお金や評価といった物質的な報酬とは異なり、承認欲求や自己有用感が満たされることで心が満たされる精神的な報酬のことで、今回のように一瞬で接客の質や態度をポジティブに変える大きな原動力になります。
その後、買い物忘れに気づいた筆者が再びレジの列に並び直して会計を済ませた際、彼女は最高に輝く笑顔で「良いお年をお迎えください」と送り出してくれました。きっと筆者が離れていた間にも、前の光景を見ていた別のお客様たちが次々と彼女に温かい言葉を贈り続けたのでしょう。接客を単なる「作業」としてこなしていた彼女の頑なな心が、人々の優しさによって優しく解き放たれた瞬間でした。
近年はセルフレジの導入やスマートフォンの普及により、買い物の際に対面で会話を交わす機会が急激に減少しているからこそ、人間らしい心の通い合いが持つ価値は以前よりも高まっていると感じます。言葉は時に、人を傷つける武器にもなれば、誰かの心を包み込む毛布にも変化するものです。お店で働くスタッフも同じ人間であることを忘れずに、敬意を持った言葉をこちらから掛けたいものですね。
誰しもが自分のことで精一杯になりがちな年末の忙しい1日でしたが、他者への想像力と思いやりを少し持つだけで、お互いの世界がどれほど美しく変わるかを教えてくれる出来事でした。誰かの小さな一言が周囲を幸せに巻き込んでいくこのような感動的な瞬間に立ち会えたことは、居合わせた人々にとっても最高の年越しプレゼントになったに違いありません。
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