私たちが毎日何気なくスマートフォンで打ち込んでいる「絵文字」が、今や世界共通の言語として君臨しています。1990年代後半に日本の携帯電話から産声を上げたこの文化は、現在では世界中で約29億人もの人々に愛用されるまでになりました。
文字だけでは伝わりにくい微妙な感情を、たった一文字で補完できる便利さは、コミュニケーションに革命をもたらしたといえるでしょう。2000年代以降、海外メーカーが相次いで採用したことで、その勢いはさらに加速しています。
異なるデバイス間でも正しく表示させるため、「ユニコード(Unicode)」という世界共通の文字コード規格が採用されています。あらゆる言語や記号に番号を割り振るこの仕組みにより、国境を越えたやり取りが可能になっているのです。
2019年12月09日現在、ユニコードが公認する絵文字は3178種類にまでのぼります。2019年10月にも「車椅子に乗る人」を含む168種類が新たに追加され、多様性を重視する現代社会の姿を色濃く反映し続けています。
「燃える豆腐」に見える?文化の壁が生むユニークな誤解
種類が増え便利になる一方で、文化の違いによる「解釈のズレ」がSNSなどで大きな注目を集めています。例えば、日本人にはお馴染みの赤いチューリップ型の「名札」の絵文字は、海外ユーザーから驚きの声を浴びることとなりました。
一部の海外利用者からは「なぜ豆腐が燃えている絵文字があるのか」と不思議がられる事態に陥っています。また、手を合わせた絵文字も、日本では「お願い」や「感謝」を意味しますが、欧米では「ハイタッチ」と受け取られるのが通例です。
国立情報学研究所の武田英明教授は、こうした現象を「異文化間における解釈の不一致は、絵文字という表現手法の限界でもある」と指摘しています。共通言語を目指しながらも、背景にある文化が壁となるのは非常に興味深い問題ですね。
デジタルな記号が映し出す政治的緊張と「忖度」の影
絵文字は単なる意思疎通の道具に留まらず、時には国際的な政治問題の火種になることさえあります。2019年10月には、香港の一部端末で台湾の旗の絵文字が表示されなくなったことがインターネット上で大きな波紋を呼びました。
中国本土では以前から表示が制限されていましたが、民主化運動に揺れる香港でも同様の措置が取られたのです。これに対し、デバイスメーカー側が政治的配慮、いわゆる「忖度」をしたのではないかという憶測が飛び交っています。
開発初期に携わったドワンゴの栗田穣崇専務は、種類が増えすぎた現状を危惧し、「シンプルで誰もが直感的に理解できるものに絞るべきではないか」と提言しています。情報の密度を高めるには、引き算の美学も必要かもしれません。
個人的な見解を述べさせていただけるなら、絵文字の進化は人間の表現欲求そのものです。LINEのスタンプが490万種を超えるほど巨大化した今、私たちは言葉を使わない「新しい非言語コミュニケーション」の時代に立ち会っています。
日本発の文化が世界のスタンダードとなったことを誇りに思いつつ、この小さな記号たちが分断ではなく、相互理解の架け橋となることを願ってやみません。今後のさらなる進化と、新しい表現の誕生が本当に楽しみでなりませんね。
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