静岡県農業協同組合中央会が発表した2019年度の中間決算によれば、県内17の農協すべてが黒字を達成するという、非常に明るいニュースが飛び込んできました。経常利益の合計は54億円に達し、前年の同じ時期と比べて4%のプラスを記録しています。これは2019年11月19日現在の報告として、実に3年ぶりの増益という節目を迎えたことになります。
今回の好決算を支えた最大の要因は、実は売り上げの伸びではなく「コストのカット」にあります。具体的には、正職員の数を絞り込むことなどで人件費を抑え、事業管理費を2%削減したことが収益を大きく押し上げました。SNS上では「地元の農協が黒字なのは安心だ」という声がある一方で、「職員の負担が増えていないか心配だ」といった現場を気遣う複雑な反応も見受けられます。
収益構造の変化と「信用事業」の底力
一方で、本業の儲けを示す「事業総利益」に目を向けると、375億円と前年比で1%減少しており、こちらは3年連続のマイナスという厳しい現実も浮き彫りになっています。ここで言う「信用事業」とは、いわゆる銀行業務のことですが、今回は保有していた有価証券の売却などで利益を確保しました。しかし、保険業務にあたる「共済事業」の契約高が落ち込んでおり、その穴を完全には埋めきれていません。
さらに、肥料や農薬を販売する「購買事業」や、農産物を流通させる「販売事業」も、期待されたほどの伸びを見せませんでした。こうした主力事業の停滞を、現金業務を自動化する機器の導入に伴う助成金などの「事業外損益」で補っているのが現状です。ITを活用した効率化は時代の流れですが、本来の農業支援という側面でどう利益を出すかが今後の焦点になるでしょう。
未来を見据えた農協経営への提言
2019年の中間決算を総合的に見ると、税引き前利益も49億円と微増しており、経営の健全性は保たれていると言えます。17ある農協のうち14団体が3月期、3団体が2月期を決算期としていますが、足並みを揃えて黒字を維持した点は高く評価されるべきでしょう。守りの経営によって捻出された利益を、今度はどうやって農業の活性化という攻めの姿勢に転換していくかが問われています。
個人的な見解としては、人件費削減による増益はあくまで一時的な「止血」に過ぎないと感じています。農家の高齢化や担い手不足が進む中で、農協には単なる金融機関としての役割を超えた、地域コミュニティのハブとしての機能が求められているのではないでしょうか。今回の黒字を原資として、次世代の若手農家が希望を持てるような新しい投資が行われることを切に願っています。
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