株式市場では日経平均株価が2020年1月14日に2万4000円台を回復し、約28年ぶりの高値更新まであと一歩のところへ迫っています。しかし、そこからの上値が驚くほど重く、相場全体にはどこか停滞したムードが漂っているのが現状です。SNS上でも「株価は上がっているのに、景気が良い実感が全く湧かない」「ここから買い進むのは怖い」といった、慎重な声が多数を占めています。投資家たちが大手を振って市場に参加できない、その背景を探っていきましょう。
現在の市場を牽引しているのは、2021年3月期に向けた企業業績の回復シナリオです。投資家の間では、業績の悪材料が出尽くしたと先回りして判断する動きがじわりと広がっています。例えばミスミグループ本社は、2020年3月期の純利益が前期比で16%減る見込みであるにもかかわらず、株価は一時約1年4カ月ぶりの高値を記録しました。これは、その翌期である2021年3月期に22%の増益へと転じるという、市場の強い期待感が先行しているためです。
このような「今期は厳しいが来期は跳ね上がる」という期待先行の銘柄物色は、他にも多く見られます。最終減益が5割以上と予測されているIHIやルネサスエレクトロニクス、THKなどの銘柄も、2020年に入ってから株価が約1割も上昇しました。アナリストの予測傾向を示すリビジョン・インデックス(市場の業績予想の修正方向を数値化した指標)も、来期ベースで2019年12月に1年ぶりのプラス圏へ浮上しており、データ上も回復の兆しを見せています。
しかし、こうしたポジティブな動きがある一方で、投資家の多くは完全に買いを入れず、いつでも逃げ出せる「半身の構え」を崩していません。2020年1月20日の東証1部における売買代金が約1カ月ぶりの低水準となる1兆4000億円台に留まったことが、その警戒心の強さを物語っています。これほどまでに市場が疑心暗鬼になっている最大の理由は、日本企業の業績と結びつきが強い中国景気の先行き不透明感にあります。
国際通貨基金(IMF)の発表によると、中国の国内総生産(GDP)成長率は2019年に6.1%と、約29年ぶりの低水準を記録しました。さらに2020年、2024年にかけて成長率は一段と落ち込むと予測されています。2020年1月15日に米中貿易協議が「第1段階」の合意に達したものの、米国による対中関税が完全に撤回されたわけではありません。この関税負担は、今後の中国経済にとって大きな足枷であり続けるでしょう。
さらに、米国の大統領選挙が近づく中で、政治的なリスクも不気味に潜んでいます。現大統領が選挙戦を有利に進めるために、新たな貿易摩擦を引き起こすカードを切る可能性は否定できません。加えて、米国とイランの衝突による中東情勢の緊迫化など、世界中が不確実性に満ちています。このような状況下では、目先の回復期待だけで強気に買い進むのはリスクが高すぎると、多くの投資家がブレーキをかけているのです。
現在の日経平均の株価収益率(PER:株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示す指標)は14倍台半ばに達しており、2018年の高値水準を超えています。これは利益に対して株価が割高になりつつあることを意味しており、ここからさらに株価が上昇するためには、単なる一時的な回復ではなく、中長期的な業績拡大の確証が絶対に必要です。これから本格化する2019年4月から12月期の決算発表を、市場は冷徹な目で見つめています。
編集部としては、現在の株価上昇は実体を伴わない「期待の先食い」である側面が強いと考えています。不透明な国際情勢の中で、企業経営者が示す未来への舵取りこそが、これからの相場の真の試金石になるはずです。投資家の皆さまにおかれましては、目先の株価の数字に惑わされることなく、企業の稼ぐ力が本当に戻ってくるのかどうか、各社の決算発表とその内実に冷静に耳を傾けることを強くお勧めいたします。
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