2020年春にいよいよ商用化を迎える高速通信規格「5G」ですが、世界では早くもその次の世代である「6G」を巡る主導権争いが勃発しています。総務省は2020年01月27日に、2030年ごろの実用化を見据えた官民による有識者会議の初会合を開催いたしました。5Gの技術開発や商用化において海外勢に遅れをとってしまった日本ですが、ここからの劇的な失地回復を目指して国家規模のプロジェクトを本格的に始動させています。
SNS上でもこの動きは大きな注目を集めており、「5Gすらこれからの段階なのに、もう次を考えているのか」「今度こそ日本発の技術で世界をリードしてほしい」といった期待と驚きの声が数多く寄せられているようです。足元で大きく開いてしまった世界との差を埋めるのは決して容易ではありませんが、官民が一体となった今回の取り組みには、単なる通信速度の向上に留まらない、日本の未来を左右する重大な戦略が隠されています。
今回の有識者会議の座長には東京大学の五神真学長が就任され、「競争力のある国内の基礎技術を見極めて活用していく」と力強く方針を示されました。会議のメンバーは経団連や消費者団体の幹部、全国知事会長ら10人で構成されており、強力な布陣で6G開発に向けた国家戦略を立案していく方針です。さらに、2020年01月29日に立ち上がる作業部会にはNTTや東芝の関係者が参画し、技術面からの具体的な検討を加速させます。
今後のスケジュールとしては、2020年6月をメドに最初の提言を取りまとめる予定となっており、2021年度予算の概算要求へ具体的な支援策を盛り込む方針が示されました。国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)や、世界の通信規格を策定する民間標準化団体「3GPP」での議論を見据えながら、数年間にわたってこの枠組みを継続する見通しです。これほどまでに総務省が急ピッチで検討を開始した背景には、海外勢の猛烈な動きがあります。
中国政府はすでに2019年11月に6Gの研究開発開始を大々的に発表しており、政府系機関だけでなく37の大学や研究機関、トップ企業を巻き込んだ強固な組織を立ち上げました。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)もすでに専門の研究チームを任命したと公言しています。また米国でもニューヨーク大学や国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が研究拠点を設置し、通信行政を担う連邦通信委員会(FCC)が超高周波電波の利用を認可しました。
なぜこれほど世界中が躍起になるのかというと、通信分野の国際規格に関わる「必須特許」を押さえることが、将来的に巨額の利益をもたらすからです。5Gの特許シェアでは韓国のサムスン電子が首位に立ち、日本勢はNTTドコモの6位が最高という悔しい結果でした。さらに基地局のシェアにいたっては、日本企業は世界で1%以下にまで落ち込んでいます。だからこそ、次の世代でゲームのルールをひっくり返す「ゲームチェンジ」が必要なのです。
編集部としても、この6Gを巡る戦いは日本が再び世界のトップランナーに返り咲く絶好のチャンスであると考えています。これまでの高速化競争だけでは厳しい戦いになりますが、日本のお家芸とも言える「省エネ技術」や「高度なセキュリティ」を前面に押し出せば、十分に勝機は見出せるでしょう。実際にNTTが提言する光通信構想「IOWN(アイオン)」は、消費電力を100分の1に抑える画期的な技術として世界から注目を集めています。
さらに、ドコモが目指す空や海、宇宙までをカバーする通信エリア拡張構想や、東芝やNECがリードする次世代の「量子暗号技術」など、日本には世界に誇れる武器が数多く存在しているのです。6Gは「ビヨンド5G」とも呼ばれ、5Gの10倍以上の通信速度や超低遅延が求められます。自分の立体映像を遠方に浮かび上がらせるSFのような暮らしを実現するためにも、日本の技術が世界標準となることを切に願ってやみません。
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