日本のメディア史に新たな1ページが刻まれます。NHKは2020年4月1日から、総合テレビと教育テレビの番組をインターネットでリアルタイムに視聴できる「NHKプラス」を本格的に始動させます。これに先立ち、2020年3月1日からは試験的な配信もスタートする予定です。テレビを持たない若者層の取り込みを狙うこの試みは、これまでの「テレビは居座って見るもの」という常識を覆すポテンシャルを秘めており、私たちのライフスタイルを大きく変えるきっかけになるでしょう。
このニュースに対し、SNS上では「スマホで見られるのは本当にありがたい」「通勤電車のなかでニュースをチェックしたい」といった前向きな声が目立ちます。その一方で、「テレビがない人からも受信料を徴収する布石なのではないか」といった警戒感や不安を隠せない意見も多く、ネット上では早くも激しい議論が巻き起こっています。多くの人々がこの新サービスに関心を寄せており、期待と懸念が入り混じった複雑な反応が見られます。
今回のサービスは、すでにテレビの受信契約を結んでいる世帯であれば、追加の費用負担なしで利用できる点が大きな特徴です。スマートフォンやタブレットに専用のアプリをダウンロードし、IDを設定するだけで、1つの契約につき同時に最大5台の端末で視聴が可能となります。さらに、リアルタイムでの同時配信だけでなく、放送終了後から1週間いつでも好きな時に番組を遡って視聴できる「見逃し配信」もセットで提供されます。
ここで注目したいのが、総務省からの要請によって配信時間が「1日18時間」に制限された点です。具体的には午前6時から翌日の午前0時までとなります。これは、NHKという巨大な組織がインターネットの世界で際限なく肥大化し、民放各社や民間企業のビジネスを圧迫しないようにするためのブレーキとしての役割を持っています。公共放送としての信頼性を保ちつつ、どこまで利便性を追求できるのかが今後の焦点です。
NHKがこれほどまでにネット配信へ注力する背景には、深刻な「若者のテレビ離れ」があります。10代のテレビ視聴時間が激減するなか、危機感を募らせたNHKは、受信料によって作られた質の高いコンテンツを若い世代に届けるための生命線として、このネット同時配信を位置づけています。机に向かってスマホを眺める現代の若者たちに対し、テレビ側から歩み寄る姿勢を見せた形といえます。
しかし、ネットの世界にはすでに強力なライバルたちがひしめき合っています。定額料金で動画が見放題となる「サブスクリプション(定額制サービス)」の代表格である米ネットフリックスは、巨額の制作費を投じて魅力的な独自作品を連発し、日本国内でも会員数を爆発的に伸ばしています。さらに、スポーツ特化型の配信で話題のDAZN(ダゾーン)や、インターネットテレビとして独自の地位を築くアベマTVなど、群雄割拠の時代を迎えています。
次世代の超高速通信規格である「5G」のサービス開始も目前に控え、動画コンテンツを巡る時間はまさに奪い合いの様相を呈しています。筆者の視点として、NHKのネット参入は、日本のコンテンツ全体の質を底上げする素晴らしい刺激になると考えています。潤沢な予算を活かした良質なドキュメンタリーや報道番組がネットで手軽に見られるようになれば、民放や海外勢もさらに面白い番組を作ろうと切磋琢磨するはずだからです。
今回の同時配信のスタートは、単に「スマホでNHKが見られるようになる」というレベルの話ではありません。放送と通信の境界線が完全に消え去り、すべてのメディアが同じ土俵で戦う「大競争時代」の幕開けを意味しているのです。私たち視聴者にとっては、選択肢が増えてより豊かなエンタメ環境が整うことになります。2020年4月1日以降、日本の動画ビジネスがどのように変貌を遂げていくのか、目が離せません。
コメント