フランスが2019年に導入したデジタル課税をめぐり、長らく対立していたアメリカとフランスの間に、大きな動きがありました。2020年1月20日、両国は2020年末まで報復関税の応酬を控えることで合意に達しました。世界中を騒がせたこの経済的衝突が、ようやく冷静な議論の場へと戻ろうとしています。
そもそもデジタル課税とは、GAFAに代表されるような巨大IT企業が、物理的な拠点を持たない国でも莫大な利益を上げている状況に対し、それらの企業が利益を上げている「国」で適切に税金を徴収しようという仕組みです。フランスは2019年7月に、売上高の3%を徴収する独自の法律を成立させましたが、これにアメリカが強く反発しました。
アメリカは2019年12月、フランス産のチーズやワインといった高級品に対し、最大で100%という非常に高い制裁関税を課す可能性を示唆し、貿易戦争の火種となっていました。これに対しフランスも、EUを通じて対抗措置をとる構えを見せており、緊張が高まっていたのです。この状況に世界経済が身構えていたのは言うまでもありません。
内政を優先し外交リスクを回避
なぜ今回、このような合意に至ったのでしょうか。背景には、両国ともに2020年は内政における非常に重要な年であるという事情があります。アメリカでは大統領選が、フランスでは年金改革といった難局が控えており、これ以上外交面で不確定な衝突を増やすことは得策ではないという共通認識があったと考えられます。
マクロン大統領は2020年1月20日にTwitterで、トランプ大統領との建設的な議論について喜びを綴りました。トランプ大統領もこれに対し「すばらしい!」と反応しており、両国のトップ同士が対立の激化を望んでいない姿勢を明確にした形です。このSNSでのやり取りは、市場関係者や市民の間でも、事態が沈静化に向かうという安堵のサインとして大きな反響を呼びました。
私はこの動きを非常に賢明な判断だと評価しています。国際貿易において、感情的な関税の殴り合いは結局のところ消費者や企業に不利益をもたらすだけです。フランスのルメール経済・財務相が米側に譲歩案を示しているという事実は、双方が「解決」というゴールに向かって歩み寄ろうとする強い意志の表れと言えるでしょう。
OECDの枠組みと今後の展望
フランスは、自国独自の課税はあくまで経済協力開発機構(OECD)による国際的な合意が整うまでの「暫定措置」であると主張しています。OECDでは、2020年末までに130以上の国や地域が参加するデジタル課税の共通ルール策定を目指しています。このゴールに向けて、今回の「休戦」は極めて重要な意味を持ちます。
実際に、2020年1月22日からは世界経済フォーラムの年次総会、いわゆるダボス会議の場で両国の財務トップが直接交渉に臨みます。この対話こそが、報復関税という負の連鎖を断ち切り、持続可能なルールを作り上げる鍵となるはずです。世界が注目するこの会議で、どのような具体的な進展が見られるのか、今後も注視していく必要があるでしょう。
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