2020年1月29日、福井県が心待ちにしていた冬の味覚の祭典に、突然のブレーキがかかりました。中部国際空港で予定されていた「越前ガニ」の無料試食イベント。本来であれば、訪日外国人観光客へその魅力を直接届け、福井への誘客を狙うはずの絶好の機会でした。しかし、中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大という、予測困難な事態がその計画を白紙へと追い込んだのです。
このイベントでは、1月29日から31日までの3日間、合計900食もの豪華な越前ガニが提供される予定でした。高級食材であるカニを無料で振る舞うことで、行き先を迷っている旅行者の心をつかもうとする、いわば攻めのPR戦略です。しかし、公衆衛生上の安全が何よりも優先されるべきという判断は、観光地をアピールする立場としても、極めて冷静かつ妥当な選択だったと言えるでしょう。
感染症拡大が及ぼす地方観光への影
福井県水産課の説明によると、中部国際空港自体が感染症拡大防止策の一環として、試食や試供品の提供を一時休止しているとのことです。今回の決定は、県の意向というよりも、空港全体の防疫体制に歩調を合わせた結果でした。SNS上では「せっかくの美味しいカニが残念」「安全が第一だから仕方がない」といった、地元へのエールと事態の深刻さを嘆く声が交錯しています。
地方自治体が海外からの観光客を呼び込む「インバウンド」戦略は、今や日本の地域経済を支える重要な柱です。未知のウイルスによる突然のキャンセルは、担当者が語るように、まさに「肩を落とす」ような痛手ではないでしょうか。漁期中に状況が改善すればリベンジ開催も視野に入れているとのことですが、現時点では目処が立たないという先行き不透明な状況が続いています。
私個人としては、今回のイベント中止は決して「終わりの始まり」ではないと考えます。むしろ、不測の事態においても冷静にリスクを管理し、観光客の安全を守る姿勢こそが、長期的には日本の観光地としての信頼度を高めるはずです。一日も早い終息を願いつつ、越前ガニという素晴らしい食文化が、再び多くの笑顔を福井へ連れてくる日を待ちたいと思います。
コメント