繊維メーカーとしての枠を超え、革新を続ける帝人が新たな挑戦に打って出ました。同社は2020年2月9日、2022年度をゴールとする3カ年の新しい中期経営計画を公式に発表したのです。今回の計画で最も注目を集めているのが、過去の記憶を塗り替えるほどの巨額な投資枠でしょう。前回の実績を1100億円も上回る、総額3500億円という破格の資金が用意されました。
この巨大な投資枠の中で、主役に抜擢されたのがヘルスケア分野です。全体の4割以上にあたる1600億円がこの医療・健康領域に集中投下されます。鈴木純社長は「地域包括ケアの構築に向け、自社に足りないピースを補うためにM&A(企業の合併・買収)を積極的に活用していく」と力強く語りました。地域包括ケアとは、高齢者が住み慣れた街で医療や介護を一体的に受けられる仕組みのことです。
ネット上では「あの帝人がここまで医療に本気とは驚いた」「高齢化社会を見据えた素晴らしい戦略」といった期待の声が続出しています。一方で「本業の素材ビジネスとのシナジーがどう生まれるのか見ものだ」という冷静な分析も見られました。伝統的な事業に甘んじることなく、時代のニーズを捉えて大きく舵を切る姿勢は、多くの投資家やビジネスパーソンの心を揺さぶっているようです。
編集者としての私の視点ですが、この戦略は非常に先見の明があると感じます。単に薬や医療機器を売るだけでなく、社会のインフラとなる「仕組み」そのものを買いに行く姿勢に、同社の並々ならぬ覚悟が漂っているからです。M&Aを成長の起爆剤にする戦略は、激変する現代を生き抜く最適解と言えるでしょう。伝統の素材事業で培った技術がどう活きるのか、今から楽しみでなりません。
もちろん、帝人の強みであるマテリアル(素材)分野にも1300億円という十分な予算が確保されています。その他の事業へも600億円が配分され、全体のバランスを取りながら攻めの姿勢を崩しません。鈴木社長が「まさに今は成長基盤を確立するステージ」と表現するように、同社は未来の主力事業を育てるために、今この瞬間に全力を注いでいるのです。
この投資の先に見据える業績目標も、非常に野心的な数値が掲げられました。2022年度のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を、2019年度の見通しから一気に4割も引き上げ、1500億円にするという目標です。EBITDAとは、国ごとの税制や金利の影響を除いて、企業が本業でどれだけ稼ぐ力があるかを測る世界基準の指標を指します。帝人の大改革は、始まったばかりです。
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