2020年の米大統領選に向けた民主党の候補者争いは、2020年2月11日に東部のニューハンプシャー州で第2戦の予備選を迎えます。この地域は売上税や所得税が存在しない自由経済の象徴です。しかし、驚くべきことに支持率トップを走るのは、富裕層への大増税を掲げるバーニー・サンダース上院議員となっています。この背景には、深刻な格差拡大や薬物の蔓延によって「アメリカン・ドリーム」が揺らいでいるという残酷な現実があるのです。
SNS上でもこの逆転現象は大きな話題を呼んでいます。「自由を愛する州で社会主義的な政策が支持されるなんて歴史の転換点だ」という驚きの声が溢れる一方で、「それだけ生活が追い詰められている証拠だ」と共感する意見も多く見られます。今回の予備選は序盤の勢いを占う極めて重要な一戦であり、2020年2月11日の深夜には大勢が判明する見込みです。最新の世論調査では、サンダース氏が26.6%の支持率でトップを維持しています。
そこへ猛烈な追い上げを見せているのが、初戦のアイオワ州で大躍進を遂げたピート・ブティジェッジ前サウスベンド市長で、21.3%の支持を集めています。一方で、当初は本命と目されていたバイデン前副大統領は苦戦を強いられており、早くも正念場を迎えました。サンダース氏は氷点下近い過酷な寒さの中で演説を行い、医療費の負担で毎年50万人もの人々が破産に追い込まれている悲惨な現状を訴え、国民皆保険制度の導入を熱く約束しました。
さらに、若者を苦しめる巨額の学生ローンを、株式取引などへの新しい課税によってすべて帳消しにすると主張しています。こうした過激とも言える変革の訴えが、現状に行き詰まった多くの有権者の心を捉えているのでしょう。しかし、この州の歴史は重税への反発から始まっており、車のナンバープレートには「自由か死か」という言葉が刻まれているほどです。それにもかかわらず彼が支持されるのは、もう一つの深刻な理由があります。
それが、医療用麻薬を起源とする依存性薬物「オピオイド」の社会問題です。この地域では過剰摂取による死亡率が全米平均の2倍を超えており、街には治療施設が点在しています。かつて産業で栄えた東部ですが、グローバル化の波に押されて経済格差が広がり、多くの人々が希望を失いました。この絶望から生じる薬物中毒や自殺などは、高名な経済学者が「絶望死」と命名したほどで、アメリカ全体の深刻な経済損失を生み出しています。
こうした変革への渇望は、新星であるブティジェッジ氏への支持にも繋がっています。彼もまた、巨大企業への減税を批判し、最低賃金の引き上げや低所得者への手厚い支援を公約に掲げています。連邦法人税の大幅な引き上げを提案するなど、アプローチは違えど「増税と富の再分配」を目指す姿勢は共通しています。このように、かつての資本主義の楽園は今、深刻な格差と病理に苦しむアメリカという国家の縮図そのものとなっているのです。
私は、このニューハンプシャー州の選択こそが、近代資本主義の限界と、人々が求める救済の声をリアルに反映していると感じます。自己責任を美徳としてきた伝統的な「小さな政府」の理念が、生活苦にあえぐ市民を救えなくなっているのは明白です。一方で、急進的な大増税が経済の活力を削ぐという懸念も根強く、与野党が拮抗するこの激戦州の行方は、国家の進むべき道を左右するでしょう。国を二分する思想の戦いから目が離せません。
コメント