アサヒビール塩沢賢一社長が語る「スーパードライ」の聖域なき改革!鮮度と若年層攻略でビール市場を奪還せよ

国内ビール市場で圧倒的な存在感を誇るアサヒビールがいま、大きな変革の刻を迎えています。2019年03月に就任した塩沢賢一社長は、営業の最前線を歩み続けてきた現場主義のリーダーです。ライバルであるキリンビールの「一番搾り」のリニューアルや、新ジャンル「本麒麟」の躍進による猛追を前に、王者の誇りをかけた巻き返しを誓っています。

就任から半年が経過した2019年09月08日、塩沢社長はこれまでの「中央集権的」な体制からの脱却を明言しました。かつては本社がテレビ広告や特売のスケジュールをすべて統括していましたが、多様化する現代の消費行動には対応しきれなくなっています。現場が直面する細かなニーズを汲み取り、柔軟に販促策を変化させる組織へと生まれ変わろうとしているのです。

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若者の心をつかむ「ザ・クール」と苦味を抑えた新戦略

アサヒビールの代名詞といえば、キレ味鋭い「スーパードライ」ですが、若年層のビール離れは深刻な課題です。そこで同社は、2019年に小型ボトルの「スーパードライ ザ・クール」を投入しました。これは、立ったまま瓶で飲むスタイルを提案するもので、海外ブランドのようなファッショナブルな飲用体験を狙っています。SNSでも「瓶のまま飲むのが新鮮でカッコいい」と話題を集めています。

注目すべきは、その「味」の設計です。実は今の若者は強い苦味を敬遠する傾向にあります。そこで「ザ・クール」では、あえて苦味を抑えた設計を採用しました。驚くべきことに、この飲みやすさはシニア層からも「これくらいの軽やかさが丁度いい」と好評を得ているそうです。王道の味を守りつつ、派生商品によって「ドライ」への入り口を広げる戦略が功を奏しています。

ここで専門用語の解説ですが、ビール業界で言う「新ジャンル(第三のビール)」とは、麦芽比率の低い発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたり、麦芽以外の原料を使ったりした飲料を指します。税率が低いため安価に提供でき、技術向上によってビールに近い味わいが実現されています。アサヒはこの激戦区でも、「鮮度」という原点回帰の武器で勝負を挑みます。

常識を打ち破る「翌日出荷」!鮮度がもたらす圧倒的な価値

塩沢社長が手応えを感じているのが、製造の翌日には出荷を行う「鮮度」への再挑戦です。通常、製造から3日以内でも十分に新鮮とされますが、翌日発送は物流の限界に挑む試みでした。結果として、通常の倍以上の売り上げを記録したものの、「お客様にその凄さがまだ伝わりきっていない」と社長は冷静に分析します。鮮度こそがおいしさの直結することを再認識させる売り方が今後の鍵となるでしょう。

過去には、五郎丸歩選手を起用した糖質オフビール「ザ・ドリーム」が、期待に反して苦戦した苦い経験もありました。消費者から「ビールに見えなかった」という意外な評価を受け、作り手の思い込みと市場の視点のズレを痛感したといいます。こうした失敗を糧に、2019年10月の消費増税、そして2020年の酒税改正を見据え、アサヒは「なぜこのビールを飲むのか」という飲用動機の創出に全力を注いでいます。

編集者としての視点ですが、一つの成功体験に縛られず、自らの看板商品である「ドライ」を客観的に捉え直す塩沢社長の姿勢は非常に誠実だと感じます。伝統を守ることは、変化を拒むことではありません。2018年12月期の減収という厳しい数字を直視し、ビールの未来を切り拓こうとするアサヒビールの挑戦は、私たちの乾杯のひとときをより豊かなものにしてくれるに違いありません。

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