効率化やコスト削減が叫ばれる現代ビジネスにおいて、「乾いた雑巾を絞る」ような徹底した管理は美徳とされがちです。しかし、日本のインターネットを切り拓いてきたIIJ(インターネットイニシアティブ)の会長、鈴木幸一氏は全く異なる哲学を持っています。2019年10月29日、彼は自身の経営スタイルを「ぬれ雑巾経営」と表現し、その真意を明かしました。
このユニークな考え方の源流は、日本を代表する技術者でありホンダの創業者である本田宗一郎氏との交流にあります。当時30代半ばだった鈴木氏は、40歳も年上の本田氏から「エンジニアを自由に遊ばせる勇気を持て」と教え込まれたそうです。トップを走る企業ならいざ知らず、新しい価値を創造する立場の組織が遊びを失えば、技術の泉は枯れてしまうという警鐘でした。
常識を打ち破る「自由」が生み出す世界レベルの技術力
かつてのIIJは、新サービスの開発時こそ泊まり込みで作業に没頭する猛烈な一面がありましたが、平時は驚くほど放任主義を貫いていました。出勤時間すら個人の裁量に任され、「昼前には来るように」と促せばランチ直前に現れる社員もいたといいます。一見するとルーズに思えるこの環境こそが、世界的なカンファレンスで議長を務めるような一流の専門家たちを輩出する土壌となりました。
経営の観点からは「無駄を省けば利益が増える」という指摘もあるでしょう。しかし、鈴木氏は「無駄や遊びがなければ新機軸は生まれない」と断言します。この信念は、物流用のコンテナをデータセンターに転用するという斬新なアイデアにも結びつきました。この画期的な手法は、現地での設置作業を劇的に短縮し、経済産業省から表彰を受けるほどの成果を挙げています。
SNS上では「今の時代にこそ、こうした心の余裕が必要だ」「遊びからイノベーションが生まれるという言葉に救われる」といった共感の声が相次いでいます。管理を強めるほど組織は保守化し、若者の自由な発想は摘み取られてしまうものです。2019年10月29日現在、鈴木氏は会長として若手の背中を押し、組織に新しい風を送り込み続けることを自らの使命としています。
私自身の視点としても、目先の数字に囚われすぎない「懐の深さ」こそが、真のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる鍵だと感じます。ガチガチの管理体制では、誰も見たことのない未来を描くことはできません。技術者が「明日が楽しみだ」と思えるような、適度な潤いを含んだ環境づくりこそが、次世代のスタンダードになるべきではないでしょうか。
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