🚀世界トップを狙う町工場!由紀精密・大坪正人社長が語る「下請けで培った技術」と「挑戦の原点」

神奈川県茅ケ崎市に拠点を置く由紀精密は、倒産の危機を乗り越え、今や金属の切削加工技術を武器に世界的な企業やプロジェクトからも引き合いが絶えない企業へと変貌を遂げました。その立役者である大坪正人社長は、「地道に一つ一つ積み重ねてきた」と謙虚に語りながらも、「世界で一番を取らなきゃ、やっている意味がない」という熱い信念を胸に秘めています。この飽くなき挑戦心の源は、新卒で入社した企業での6年間にありました。

大坪社長は、祖父、父に続く由紀精密の三代目です。幼いころから自宅の敷地にある工場で、切削加工の音と機械油の匂いに囲まれて育ちました。しかし、多くの中小製造業の親と同様に、ご両親は工場を継ぐことを望まず、「下請けは本当に厳しいから、大手の最終製品メーカーに入った方が良い」と常に話されていたそうです。このような環境ながらも機械への興味は尽きず、東京大学工学部に進学し、迷わず機械科を選択されたのです。

大学院まで進んだ大坪社長が就職先に選んだのは、まさかの新興企業、インクス(現SOLIZE)でした。これは、図面のデジタルデータを基に立体物を制作する3次元(3D)CADや3Dプリンターといった、当時始まったばかりの技術を扱う会社です。大学の卒業論文で3Dプリンター制作をテーマに選んでいたことが決め手となり、「将来的に必要になる技術だと感じた」と入社の理由を説明されています。

2000年に入社したインクスで、大坪社長はすぐに頭角を現します。当時、携帯電話機の金型製造が主力事業でしたが、図面データ受領から金型完成までをわずか45時間で実現する超高速金型製造に成功しました。それまでの金型作りには最短でも1カ月半程度かかっていたため、この驚異的な工期短縮は国内外の主要メーカーから大きな注目を集めました。「世界で一番を目指すというチャレンジ精神で取り組んでおり、本当に面白かった」と、当時の熱狂ぶりを振り返っています。

このほかにも、大坪社長は金型メーカーの再建を目指す「雷鳥ファンド」という興味深いプロジェクトにも関わりました。これはインクスが野村証券系の会社と組んで立ち上げたもので、支援した企業の多くが約1年で持ち直したそうです。この経験を通じて、「企業の強みを見つけ出し、それを発信して立て直す」という貴重な経営のノウハウを培われたことが、のちに由紀精密の経営再建へとつながっていきます。

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情報発信と社内変革で町工場から脱皮

最先端を行く新興企業で活躍してきた三代目が、小さな下請けの町工場であった由紀精密に戻った当初、社員の反応は薄く、「なんだかよくわからない」と感じていた方も多かったそうです。そこで大坪社長がまず着手したのは、社員との情報共有です。会議室すらなかった環境を変えるため、会議スペースを設置し、当初は社長が一方的に話す状態でしたが、徐々に社員からも活発な発言が出るように促しました。

さらに注力されたのは、企業として外部へ情報発信することです。企業ロゴの見直しや、プロに依頼したウェブサイトの制作、そして営業担当よりも先に広報担当を採用するなど、積極的な情報発信に努めました。現在では、設計から製造、デザイン、販促までを一貫して手がける**「ユキ・ラボ」という開発・企画部門も設けられています。

由紀精密は、日本を代表する独立時計師である浅岡肇氏とのプロジェクトにおいて、最高級の機械式時計の製造を手がけています。設計はすべてオリジナルで、非常に複雑な機構を持つ130個以上の部品を同社で高精度に削り出すという、卓越した技術力が求められる仕事です。「ものすごい精度の時計部品を作るメーカーが日本にある」という噂は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて瞬く間に世界の時計関係者の間に広まりました。その結果、最近ではスイスやドイツ、オランダといった時計の本場からもオーダーが舞い込むようになったそうです。

このように脱下請けの道を進んでいるように見えますが、大坪社長は「由紀精密はただ一方向で脱下請けに向かっているわけではない」と断言します。それは、これまでの「お客様の仕事で磨かれてきた技術力」が、宇宙や航空、医療といった高度な信頼性が求められる分野にまでつながっているという強い実感があるからです。「下請けの仕事は当社にとって非常に重要であり、高度な部品加工を求められたら、どの段階のオーダーにも対応できる体制を維持したい」と考えているのです。

大坪社長は、飛行機や衛星以外にも、質の高い部品が求められる分野として、医療用ロボットや体の動きをアシストするロボット**などを視野に入れています。これらは安全性や信頼性が非常に重視される分野であり、由紀精密の誇る技術力を活かせるはずだと確信されているのでしょう。同社には、長年金属を削ってきた熟練の職人が今も健在であり、その職人が衛星やジェット機の部品も製造しています。下請けで培った精密切削技術を武器に、由紀精密の挑戦はこれからも続いていくに違いありません。

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