学び直しの場として注目される公立夜間中学ですが、その新設への道は険しいようです。義務教育を十分に受けられなかった人々を支える「教育機会確保法」が2017年2月に完全施行されてから、2020年2月で3年を迎えました。この法律は、すべての人が教育を受ける権利を保障するために国や自治体の責務を定めたものですが、施行後に新しく開校した公立夜間中学は埼玉県川口市と千葉県松戸市のわずか2校にとどまっています。現在も全国で9都府県33校しかなく、都市部に集中しているのが現状です。
SNS上では「学びたい人がいるのに学校が増えないのは悲しい」「外国籍の子どもや不登校だった人には絶対に必要な場所なのに」と、設置の遅れを懸念する声が多く上がっています。公立夜間中学とは、戦後の混乱期に困窮などが理由で学校に通えなかった人たちのために誕生した夜間の学舎です。時代とともにその役割は変化し、現代では学校に行けなくなってしまった不登校の経験者や、日本で働く外国人労働者たちが基礎から勉強をやり直すための貴重なセーフティネットとして機能しています。
では、これほど必要とされているにもかかわらず、なぜ設置が停滞しているのでしょうか。その背景には、地方自治体の教育委員会が抱える深刻な業務過多が存在します。学校現場ではいじめへの迅速な対応に加え、主体的・対話的で深い学びを目指す「アクティブラーニング」の導入など、国が進める新たな教育方針への対応に追われています。現場を指揮する教育委員会のリソースはすでに限界を迎えており、新しい学校を一つゼロから立ち上げるだけの余裕がないというのが悲しい実態なのです。
こうした行政の隙間を埋めるように、市民がボランティアで運営する「自主夜間中学」が各地で奮闘しています。岡山市では現職の英語教師である城之内庸仁さんが3年前から活動を始め、今では約200人の外国籍の住民や、遠方から通う70代の日本人女性の学びを支えています。しかし、これらは善意の寄付に頼った運営であり、継続性には不安がつきまといます。私は、こうした個人の熱意だけに教育の機会を委ねる社会であってはならないと考えます。学びはボランティアではなく、行政が保障すべき権利だからです。
文部科学省の2019年5月時点の調査では、不登校の可能性のある外国籍の子どもが2万人近くおり、2018年度の不登校の小中学生は16万4000人を超えています。ニーズは確実に高まっており、2020年4月に開校を控える茨城県常総市をはじめ、いくつかの自治体でようやく具体的な計画が動き出しました。川口市の担当者が語るように、実現には首長の強いリーダーシップが不可欠です。国が財政支援をさらに拡充し、教育委員会の負担を減らしながら設置を強力に後押しすることを切に願います。
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