秋田市内の飲食店において、これまでの現金至上主義を覆すような劇的な変化が起きています。2019年10月01日に控えた消費税率の引き上げに伴い、政府が打ち出した「キャッシュレス・ポイント還元事業」が大きな転換点となりました。これは中小店舗でクレジットカードやスマホ決済を利用すると、消費者に最大5%が還元される画期的な施策です。
この国策に呼応するように、決済事業者各社も導入のハードルを下げる魅力的なキャンペーンを展開しています。特に初期費用や月額固定費を無料にするサービスが登場したことで、コスト面から導入を躊躇していた個人経営の飲食店も、次々と新しい決済システムの導入を決め始めました。時代の波は、確実に秋田の食の現場にも押し寄せているのでしょう。
秋田市大町に店を構える「居酒屋たみすけ」では、店主の加藤民夫さんが2018年の秋からいち早くQRコード決済の「PayPay(ペイペイ)」を導入されました。QRコード決済とは、スマートフォンの専用アプリで店舗側のコードを読み取るだけで支払いが完了する仕組みのことです。財布を取り出す手間がなく、非常にスムーズな会計が可能になります。
加藤さんによれば、1日に来店する8組から10組のお客様のうち、約3分の1が既にこの決済方法を選択しているといいます。2021年09月30日まで決済手数料が無料という破格の条件に加え、売上金の入金スピードが速いことも経営者にとって大きな魅力です。現金管理のリスクを減らし、事務作業を効率化できるメリットは計り知れません。
インバウンド需要と利便性の向上がもたらす未来
SNS上でも「秋田でキャッシュレスが使える店が増えて助かる」「小銭を持ち歩かなくて済むのは最高」といった好意的な声が目立ちます。特に若い世代や県外からのビジネス客にとって、スマホ一台で完結する利便性はもはや必須と言えるでしょう。こうした利用者の熱い支持が、加盟店をさらに増やす強力なエンジンとなっているようです。
秋田市役所近くの郷土料理店「酒讃家」でも、2019年09月中に複数の決済に対応したマルチ端末の導入を決定しました。店主の藤木聡さんは、これまで現金を持ち合わせていない外国人観光客が、慌ててATMを探しに走る姿を何度も目にされてきたそうです。インバウンド、つまり訪日外国人客にとって、キャッシュレス化は「おもてなし」の基本です。
これまでの統計では、秋田県内の小売業における現金決済の比率は非常に高く、カードや電子マネーの普及は限定的でした。しかし、秋田経済研究所などの専門家は、現在の還元キャンペーンが起爆剤となり、一気にキャッシュレス化が定着すると予測しています。利便性を一度体感した消費者が、再び不便な現金生活に戻ることは考えにくいからです。
私は、この動きを単なる「流行」で終わらせてはならないと考えています。地方都市こそ、人手不足を解消する手段としてデジタルの力を活用すべきです。一方で、懸念されるのはキャンペーン終了後の決済手数料の負担でしょう。利益率が低いとされる飲食業において、持続可能な手数料体系が維持されるかどうかが、普及の真の鍵を握っています。
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