学校へ通わずに家庭を拠点として学習を進める「ホームスクール」という選択肢が、いま静かに、しかし確実に広がりを見せています。文部科学省の調査によれば、2017年度の小中学校における不登校者数は約14万4千人と過去最多を記録しました。こうした状況下で、従来の「学校復帰」だけを目指す考え方から、子どもの個性に合わせた「多様な学び」を尊重する動きが加速しているのです。
川崎市に住む生駒知里さんは、不登校をきっかけにホームスクールを始めた実践者の一人です。11歳の次男は、教科書に縛られることなく、自宅の庭にビオトープを作るなど、自らの興味を深く掘り下げる「探求学習」に励んでいます。ビオトープとは、野生生物が自然な状態で生息できる小規模な空間のことですが、彼は専門家に相談したり顕微鏡で微生物を観察したりと、大人顔負けの行動力で生きた知識を吸収しています。
ネットでつながる孤独な親たちのコミュニティ
かつてホームスクールといえば、家庭内で孤立しがちなイメージがありましたが、現在はインターネットがその壁を取り払っています。埼玉県越谷市の小田恵さんが2018年4月に立ち上げた「ホームスクーラーマップ」には、すでに国内外から約220組もの親子が登録しており、情報交換の場として機能しています。SNS上でも「同じ悩みを持つ仲間と出会えて救われた」といった、共感と安堵の声が数多く寄せられているのが印象的です。
ネットを通じた交流は画面の中だけにとどまりません。登録者同士が公園や水族館で集まるリアルなイベントも定期的に開催されており、子どもたちにとっては同世代の友人と触れ合う貴重な社会化の機会となっています。保護者にとっても、在籍校とのやり取りやPTAへの対応といった具体的な悩みを共有できることは、精神的な支えとなっているようです。家庭で学ぶことは、決して「独りきり」で抱え込むことではないのです。
デジタル教材の進化と法整備が後押しする新時代
教育現場のテクノロジー活用も、ホームスクールを強力にバックアップしています。例えば「すららネット」のようなデジタル学習教材は、アニメーションを活用して直感的に学べるため、発達障害や不登校の子どもたち約2千人に利用されています。特筆すべきは、ITを活用した自宅学習が、一定の条件を満たせば「学校の出席」として認められる制度が整いつつある点でしょう。これは、学びの場所が教室の外へ広がった証左と言えます。
2017年に施行された「教育機会確保法」により、行政には学校外での学習活動を支援する責務が課せられました。しかし、現状では教材費や体験活動の費用は家庭負担が大きく、親の教育力が試されるという課題も残っています。私は、ホームスクールは単なる「不登校の受け皿」ではなく、個々の才能を最大化させるポジティブな選択肢であるべきだと考えます。学校という枠組みに適合できないことを「問題」とするのではなく、多様な学びのスタイルを社会全体で祝福する寛容さが必要ではないでしょうか。
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