1995年6月5日、日本の雇用環境に大きな変化をもたらす「育児・介護休業法」が成立いたしました。この法律は、それまで施行されていた1992年の育児休業法をさらに進化させたもので、特筆すべきは、家族の介護のための休業制度を、すべての企業に義務付けた点でしょう。この重要な法改正の根底には、配偶者やご両親、お子様などを介護する必要が生じても、仕事を諦めることなくキャリアを継続できる環境を整備したいという強い願いが込められています。
この制度の導入は、社会全体の大きな課題であった介護離職、すなわち家族の介護を理由に仕事を辞めてしまう状況を食い止め、労働力人口の維持にも寄与する、非常に意義深い一歩であったと私は考えています。制度が実際に施行されたのは1999年4月からで、当初は対象のご家族1人あたり1回限り、最長3カ月の休みを取得できるという内容でした。
その後、この制度はより利用しやすい形へと改善を重ねてまいりました。現在では、休業期間を合計93日間まで、最大3回に分けて取得することが可能になっています。また、休業中の生活を支えるための「休業給付金」も拡充されており、一定の条件を満たせば、雇用保険から休業前の給与の67%が支給されるようになっているのです。これは、介護と仕事の両立を経済的な側面からも力強くサポートする仕組みといえるでしょう。事業主側には、従業員からの申請があれば、それを拒否することはできないという明確な義務が課せられています。
一方で、制度の普及にはまだ課題も残っていることが、当時のデータから読み取れます。厚生労働省が実施した2017年度の雇用均等基本調査によりますと、従業員5人以上の事業所のうち、介護休業制度の規定があるのは70.9%に留まり、特に中小企業においては、まだまだ整備が追いついていない実態が浮き彫りになりました。従業員30人以上の事業所では90.9%と高い規定率であることと比較しても、このギャップは無視できません。
さらに、同調査では、実際に1年間で介護休業を取得した人がいた事業所は、わずか2.0%に過ぎないという結果が出ています。これは、制度があっても、企業の理解不足や人手不足、あるいは従業員側が制度を利用しにくいと感じているなど、様々な要因が絡み合って、「制度の利用」が社会全体にまだ浸透していないことを示していると推測されます。SNS上でも当時、「制度はあるけど、職場の雰囲気を考えるととても休めない」「中小企業だから、社長に直接言い出しにくい」といった、現場の「声なき声」が多数見受けられ、制度と現実との間に横たわる深い溝を感じさせるものでした。
この法律は、介護の負担を社会全体で分かち合い、個人の尊厳を守りながら働き続けられる社会を目指すための、極めて重要な社会インフラです。今後は、大企業だけでなく、中小零細企業においても制度の周知徹底と、それを支えるための代替人員確保への支援など、より実効性のある施策が求められるでしょう。誰もが安心して介護と仕事の両立ができるワークライフバランスの実現こそが、日本の持続的な成長に不可欠であると、私は強く主張いたします。
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