人工知能、いわゆるAIの急速な進化を目の当たりにして、私たちの将来に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。2019年07月04日現在、AIが雇用を奪うという議論が盛んに行われていますが、実はそこには大きな「誤解」と「希望」が隠されています。SNS上でも「自分の仕事がAIに奪われるのではないか」という悲観的な声が散見されますが、実態はそれほど単純なものではありません。
かつて英オックスフォード大学の研究者が「将来的に約50%の職業がAIに置き換わる」という衝撃的な予測を発表し、世界中に激震が走りました。銀行の融資担当や保険審査といった、高度な知識を必要とする専門職までもがリストに並んだためです。しかし、この予測はすべての労働者が全く同じ業務をこなしているという極端な仮定に基づいたものであり、現実のビジネスシーンとは少し乖離があると考えられます。
AIは敵ではなく「仕事を面白くするパートナー」
最新の研究によれば、個々の労働者が抱える具体的な業務内容を詳細に分析した場合、AIによる代替リスクは10%程度まで下がるとされています。ここで重要なのは、仕事が丸ごとなくなるのではなく、仕事の中の「一部の作業」がAIに任されるようになるという点です。これを理解するためには、AIが何を得意としているのかを正しく知る必要があります。
AIとは、膨大なデータから法則を見つけ出す「機械学習」や、人間の脳を模した「深層学習(ディープラーニング)」などの技術の総称です。これらは、決められた手順を繰り返す「ルーティンタスク」の処理には非常に長けています。例えば、新卒採用の膨大なエントリーシートを読み込んで評価する作業などは、すでにAIが実用化されており、人間に代わってスピーディーに処理を行っています。
しかし、こうした現場では人事担当者の解雇が進んでいるわけではありません。むしろ、事務的な作業をAIに任せることで、担当者は応募者一人ひとりと向き合う面談や、複雑な判断が求められる業務に集中できるようになりました。このように、より人間ならではの能力が求められる分野へ業務内容がシフトすることを、専門用語で「タスクの高度化」と呼びます。これは生産性を高める絶好のチャンスです。
日本的雇用の強みと「やり抜く力」の重要性
慶応義塾大学の山本勲教授らの調査によると、AIを導入した職場では、労働者の仕事に対する「やりがい」や「メンタルヘルス」が改善するという驚きの結果が出ています。単純作業から解放され、クリエイティブで難易度の高い仕事に取り組むことで、仕事への活力が湧く「ワークエンゲージメント」が高まるのです。AIは私たちの仕事を奪う存在ではなく、労働環境をより良くする救世主になり得ます。
特に、日本の正社員に多い「ゼネラリスト(多角的な視点を持つ人材)」は、配置転換や新しい役割への適応能力が高いため、AI時代において大きな強みを発揮するでしょう。むしろAI導入を躊躇して従来のやり方に固執する方が、海外企業との競争に負け、結果的に国内の雇用を脅かすリスクを招きかねません。これからは積極的に最新技術を取り入れ、組織全体の競争力を高めていく姿勢が求められます。
今後のキャリア形成において鍵を握るのは、ITスキルやAIリテラシーといった知識だけではありません。注目すべきは「非認知スキル」と呼ばれる、数値化しにくい内面的な能力です。なかでも「GRIT(グリット)」、つまり「やり抜く力」が強い人ほど、AI導入後に仕事の満足度が高まる傾向にあります。技術が変わっても学び続ける姿勢こそが、不確実な未来を切り拓く最強の武器になるはずです。
編集者としての私の視点では、AIの普及は「人間が人間らしく働くための回帰」であると感じます。機械的な作業は機械に任せ、私たちは感情や創造性を伴う仕事に専念するべきでしょう。今後は大人になってからも学び直しを続ける「リカレント教育」の場がますます重要になります。未来を恐れるのではなく、自分自身のスキルをアップデートする楽しみを見出していきたいものです。
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