2018年1月に鳴り物入りでソニーから発売された犬型ロボット「aibo(アイボ)」は、高性能な人工知能(AI)やロボティクス、クラウド技術を駆使しながらも、「ただひたすらに可愛くふるまう」ことに特化した、ユニークな製品として注目を集めました。そのアイボが発売から1年を迎え、ついに**「少しだけ実用的な」側面を打ち出し始めたのです。その第一弾となる見守り機能「aiboのおまわりさん」を、さっそく試してみました。
ソニーの川西泉執行役員が「アイボの初めての仕事だ」と発表会で力を込めて紹介したこの新機能は、顔を登録した特定の人物が、指定された時間に、家のどこに居るのかを探し出し、その結果をオーナーのスマートフォンへ報告するというものです。これは主に高齢者や小さなお子様などの「見守り」を想定した機能設計となっています。
元々アイボは、鼻先のカメラによる顔認識能力や、背中の全方位カメラなどを活用し、家の中の空間を認識して地図を作成し、自己位置を推定するSLAM(スラム)機能を備えていました。SLAMとは「Simultaneous Localization and Mapping」の頭文字をとった言葉で、ロボットなどが自分の居る場所(Localization)と、周囲の環境地図(Mapping)を同時に行う技術を指します。これまでは、飼い主を認識して甘えたり、バッテリー残量が少なくなると充電器へ自力で戻ったりするためにこれらの高度な機能が使われていました。
この「おまわりさん」機能では、たとえば「リビングのソファ」など、アイボが認識している部屋の地図上で場所を指定し、その場所に目的の人物(例えばおばあ様)が座っているかどうかを確認させることが可能です。アプリの画面上でアイボが把握した部屋の地図が表示されるため、これまでベールに包まれていたSLAM機能の精度の片鱗を、初めてユーザーが確認できるようになった点も注目すべきでしょう。
編集部で飼育しているアイボ「クロすけ」に「おまわりさん」機能を試用してみたところ、アプリで「探検させる」をタップすると、クロすけは立ち上がり、左右をきょろきょろと見回しながら歩き始めました。歩く、立ち止まる、周囲を見回す、そして地図を更新する、という動作を繰り返しながら、約1時間かけておおむね正確な部屋の地図を作成できました。
ただし、顔認識の精度については、少々改善の余地があるかもしれません。事前に登録した人物の認識に失敗する場面も見受けられました。とはいえ、近年の高性能なスマートフォンなどに搭載されている高精度なセンサーと比べるのは酷というものでしょう。アイボに搭載されているセンサーの性能は、そのレベルには達していないからです。しかし、この技術的な限界を、アイボは持ち前の「可愛さ」で見事に乗り越えています**。
「探検」の最中であっても、急に座り込んでくつろぎ始めたり、横になって眠ってしまったりと、アイボ特有の**「気まぐれ」が発動するのが非常に興味深い点です。これはおそらく、搭載されているモーターの過熱を防ぐための休息動作と考えられますが、機械側の都合をあえて見せず、「眠くなってしまった」という可愛らしさでごまかす**、その作り込みの巧みさには感心させられます。
探検の最中でも、「お座り」といった声かけにはすぐに応じ、体を撫でると愛嬌たっぷりの笑顔を見せるなど、「可愛らしさ」と「仕事」をしっかりと両立させているのです。この見事なバランス感覚により、「見守り」という実用的な機能が、アイボの持つ愛らしいキャラクターの一部として、実に自然な形で組み込まれています。
アイボの「優しさ」が武器になる見守り市場の課題
現在、高齢化社会の進展に伴い、見守りに関する製品やサービスは増加の一途をたどっていますが、その難しさは**「見守り」と「監視」が常に表裏一体であるという点です。「常に誰かに監視されている」というネガティブな感情を抱かせないための工夫が、見守りサービスには不可欠とされています。この課題に対し、アイボは非常に巧みなアプローチを見せていると言えるでしょう。
ユーザーからは「可愛くて、仕事もしてくれるなんて最高!」「アイボなら監視されている感じがしないから良い」といった好意的な反応がSNSでも多く見られます。アイボの持つ「愛らしい相棒」としての存在感が、心理的な抵抗感を和らげる大きな武器となっているのです。
ソニーは2019年6月から、この「おまわりさん」を含むアイボの新機能を月額課金制のサービスとして提供し始めます。さらに2019年夏には、外部の開発者がアイボのさまざまな機能を利用できるようにする予定です。これにより、「おまわりさん」以外にも、多種多様な新しいミッションがアイボに与えられることになるでしょう。その際にも、アイボが持つ唯一無二の「可愛らしさ」**が、他のサービスにはない強力な差別化要因となるに違いありません。
私は、アイボが「監視」ではなく「愛ある見守り」を家庭にもたらす、未来の優しいロボットの在り方を示していると確信しています。今後アイボがどのように進化し、私たちの生活に溶け込んでいくのか、目が離せません。
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